心筋梗塞は命の危険を伴う怖いイメージがありますが、気になる症状を早く見つけて治療すれば元の生活に戻れます。高崎市南大類町、高瀬クリニック理事長の高瀬真一さんは「検査機器や医療技術の進歩とともに治療成績も向上しています。ただし高血圧や糖尿病などと深く関係する病気です。まずは生活習慣をしっかり見直して」と呼び掛けます。
心筋梗塞の前兆
見逃さないで
心臓の周りを囲む冠動脈の動脈硬化が進み血栓(血の塊)が詰まると、心筋(心臓の筋肉)の一部に壊死が起こります。これが心筋梗塞です。不整脈や心不全を合併すると動悸[どうき]や息苦しさを感じ、心臓突然死を引き起こすこともあります。
激しい症状は心臓のSOS
動脈硬化は血管壁に沈着した悪玉コレステロールなどによるドロドロした粥腫[じゅくしゅ](プラーク)で内腔が狭くなったり、弾力を失った血管が硬化した状態です。プラークの表面を覆う被膜が破れると血小板が集まって血栓ができます。血管が完全にふさがれてしまうと心臓が虚血状態に陥り、胸が苦しい、締め付けられる、といった激しい症状が現れます。
同じ虚血性心疾患の狭心症は、血管が狭くなって十分な血液が運べない状態です。普段よりも激しく動いたときなど酸素が不足すると一時的に胸痛などの症状が出ます。
心筋梗塞になっても冠動脈造影検査で病変を特定し、薬物療法や血管の中に細いチューブを入れて血栓を取り除くカテーテル治療などをすれば血流は再開します。ただし、一度壊死した心筋は元には戻りません。障害範囲が広がる前に早く治療することが大切です。
生活習慣病で「死の四重奏」
心筋梗塞は脂質異常症、高血圧、糖尿病、喫煙といった危険因子が複数あるほど発症しやすく、「死の四重奏」と呼ばれています。まずはバランスのよい食事と適度な運動で生活習慣を見直すことから始めましょう。
これとは別に、食と病気に関する興味深い研究があります。日本人の食生活が変わり、摂取する総脂肪のうち青魚に多く含まれる脂肪(EPA)の割合が減少するのと反比例して虚血性心疾患など動脈硬化による病気が増えるというデータです。
冠動脈の動脈硬化が検査で分かれば事前に心筋梗塞を防げそうですが、プラークの大きさに関わらず被膜が薄くて破れやすいと一気に血管が詰まる危険があります。心筋梗塞の手前の不安定狭心症の症状(下表を参照)を放置せず、①発作の回数が増える②持続時間が長くなる③痛みが強くなる─のいずれかに該当したら心筋梗塞の前兆と捉えて医療機関を受診し、検査することをお勧めします。