一念発起し30代で就農
“オランダ方式”で栽培
「家族においしいイチゴを食べさせたい」と、6年前に一念発起。新規就農者としてイチゴの栽培を始めた。
手掛けているのは、本県育成品種の「やよいひめ」を主力に、「とちおとめ」と「桃薫[とうくん]」の3種類。広さ約1000平方メートルのビニールハウス2棟で年間約20トンを収穫し、その8割を自宅で直売している。
「こんな田舎まで車でたくさんの人が買いに来てくれます」と目を細める。栽培2年目にいきなり県いちご品評会で金賞を受賞。その後も金賞と銀賞を重ね、「おいしい」との評判が口コミで広がり、客足を伸ばしている。
農林大学校で基本学ぶ
東京の不動産会社で働いていた。30代で就農を決意したのは、「家族との時間を大切にしたい」との思いから。高崎市から毎朝、新幹線通勤をしていたため、家族と触れ合う時間が少なかった。
「気の抜けない仕事で疲れたのと、少しばかり貯蓄もできたので、家族と一緒に農業しながらのんびり仕事をしたいと思いました」と振り返る。今で言うスローライフへの憧れもあったという。
栽培品目は、子供たちの要望が最も強かったイチゴと決めた。農業経験ゼロのハンディをカバーするため、県立農林大学校に1年間通い、農業の基本を学びながら本格栽培に向けて準備を重ねた。
実家は農家ではなかったが、広い土地を持っていた。「榛名山麓の傾斜地で水はけがよく、イチゴ栽培に向いていたのも幸運でした」
「桃薫」との出合いに感謝
「自然の力がギュッとつまったこだわりのイチゴ屋さん」が、直売所のキャッチフレーズ。栽培にあたって南さんは ①薬を使わない土壌消毒 ②有機肥料が中心の土作り ③天敵を利用した減農薬栽培を心掛けている。
「私はオランダ方式のイチゴ作りを実践しています」。肥料、水、温度、そして光合成に必要な二酸化炭素をコンピューターでチェック。データをもとに環境制御を行い、「甘くておいしいイチゴをたくさん収穫しています」。イチゴに付くダニを食べる有益のダニや、アブラムシを退治するハチを利用する天敵栽培によって、減農薬にも成功している。
「私をイチゴ生産者として成長させてくれたのは桃薫でした」と、新品種との出合いに感謝する。イチゴ作りを始めたばかりの2011年に品種登録された桃薫は、淡い桃のような色合いと、ココナッツのような甘い香りが特色。「希少価値のある桃薫を、やよいひめとともにぜひ味わってほしい」と話している。