下痢や便秘が腹痛とともに続く過敏性腸症候群はストレス社会の先進国に多く、国内でも消化器内科を受診する人の約3割を占めます。頻度が高い割になじみがないのは、検査では見つからない病気だからかもしれません。群馬大病院臨床試験部助教で消化器・肝臓内科の栗林志行さんは「腸内細菌の関与が話題になっている疾患で、生活様式の見直しが大事です」と助言します。
ストレスと
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群の主な症状は腹痛(または腹部不快感)と便通異常ですが、人によって下痢型、便秘型、複合型(下痢と便秘を交互に繰り返す)の三つと、どのタイプにも該当しない分類不能型に分かれます。男性は下痢型、女性では便秘型が多く、世代別では20、30歳代に多いのが特徴ですが、高齢者にも多くなっています。
別の病気も疑ってまずは検査
診断の目安は、1カ月に3日以上腹痛があり、次の三つの便通異常①排便によって腹痛が改善する ②排便頻度の変化で腹痛が始まる ③便形状の変化で腹痛が始まる─のうち二つ以上が該当した場合です。もちろん、事前に別の病気が隠れていないか血液検査、便潜血検査、大腸内視鏡検査などで調べておくことが前提です。同じような症状が大腸がんや炎症性腸疾患(難病の潰瘍性大腸炎やクローン病など)でも起こることがあるので注意してください。自己判断せずに、気になる症状が長く続いたら一度、医療機関を受診しましょう。
薬の前に生活スタイル見直す
検査で異常がないのに症状が続くのはなぜでしょう。これは腸や脳が過敏になっているからだと考えられています。原因として遺伝的要因に加えて、仕事や学業、人間関係などのストレスといった環境的要因があります。一般に不規則な生活習慣や食事量の不均衡、睡眠不足などが症状を悪化させる要因と考えられており、コーヒーや強い香辛料、アルコールなどで症状が悪くなる人もいます。まずはできるだけストレスの原因を取り除くことと生活習慣の見直しが重要です。それでも改善しない場合は症状に合った薬物療法を行います。
腸内細菌の乱れが原因!?
最近、腸内細菌との関連が注目されています。急性腸炎になった後で過敏性腸症候群を発症する一群が存在することから、腸内環境の悪化(善玉菌と悪玉菌のバランスの乱れ)が一因とする見方です。腸内環境の悪化が全身疾患に影響を与える、というさまざまな研究も世界中で行われています。日本にはヨーグルトや乳酸菌飲料を摂取する食文化がありますから、善玉菌を意識して増やすよう日常的に食べてもよいかもしれません。ただし、食べ過ぎと糖質の過剰摂取にはくれぐれも気を付けましょう。