夜明け前から収穫作業夏場の管理に神経使う
赤城山麓の傾斜地に、緑のじゅうたんを敷き詰めたような青々とした畑地が広がる。収穫期を迎えた昭和村のレタス畑だ。
「今年は巻きが良く、柔らかくておいしいですよ」と、角田さんは収穫の手を休めて笑顔を見せた。土壌作りから苗の定植、薬剤散布まで機械化が進んでいるが、収穫だけは昔ながらの手作業に頼っている。
専用の包丁を使い、レタスの葉を傷つけないように、慎重に根元近くへ刃を入れ、一株ずつ茎から切り離してかごに入れていく。切り口から青臭い独特の香りが漂う。
後継者として頑張る
東京農大短期大学部を卒業、家業を継ぐため帰郷した。17年前のことだ。「長男なので農業後継者になるのは当然と思っていました」と振り返る。小学生のころから苗の水くれなどを手伝い、高校時代はトラクターを運転して父親を助けた。
野菜王国と呼ばれる昭和村にあって、レタスの栽培面積は群を抜いている。角田さんの家も8ヘクタールを栽培している。「これから10月まで収穫作業が続くので大忙しです」。両親と3人で力を合わせ、足りないところはパートを雇って毎年乗り切っている。
「一番つらいのは夜明け前からの収穫作業です」。午前2時半に起床、3時半から作業を開始し、6時半にはJAの集荷場に運ぶ。ここから素早く首都圏などに出荷される。開店と同時に店頭に並べているスーパーでは、「朝採りレタス」として人気があるという。
「葉もの野菜は新鮮さが命。消費者に喜んでもらえれば、眠いのも我慢できます」
生で食べるのが一番
レタスは生育適温が15~20度と冷涼な気候を好む。水はけの良い土壌とともに、昭和村が一大産地になり得たゆえんだが、暑さに弱いので夏場の管理を怠れない。
「特に梅雨時は病害虫にやられやすいので気が抜けません。一晩で広範囲に被害を受けたこともあります」
収穫量や品質は、土壌作り、肥料、病害虫対策の良しあしで決まる。「実践を通して、父から学んでいるところです」と謙虚に話す。近い将来、父親に代わって屋台骨を背負っていかなければ─という気概が、言葉の端々に垣間見える。
「レタスは健康にいいので毎日食べています」。サラダにしたり、炒めたり、浅漬けにしたりと、食べ方はいろいろ。しかし、生で食べるのが一番だと言う。「シャキシャキとした食感がたまりません。採りたては最高です。ぜひ味わってみてください」