フラメンコの踊り手としてステージに立つ傍ら、主宰するスタジオ・エストゥディオグラナーテ(伊勢崎市宮子町)で生徒を指導する蜂須夕子さん。激しいステップを刻むフラメンコは運動選手並みの体力が必要だ。20代後半にスペインで暮らした経験から、家族3世代で囲む食卓には「世界一の健康・長寿食」といわれる地中海食が頻繁に登場する。育ちざかりの中学生の長女と80歳を過ぎた両親の健康に配慮したメニューだ。
3世代同じメニュー
野菜たっぷりの献立に
運動量多いフラメンコ
─フラメンコと出合ったのは自分探しをしていた23歳の時。初めて踊った日に「プロになる」と決め、4年後には本場スペインに渡っていた。アカデミア(フラメンコ学校)で学び、3年後に帰国。結婚、出産を経験しながら踊り続けてきた。
ロマ族のジプシー音楽とアンダルシア南部の伝統音楽が融合したフラメンコは、哀愁を帯びた歌声とかき鳴らされるギターの音色に踊りが加わった三位一体の伝統芸能です。情熱的な踊りは見た目以上に運動量が多く、1曲だけでも全身から汗が噴き出るほど。重心がしっかりしていないと踊れないので、初心者は片足立ちから練習します。
日本人の琴線に触れるのでしょうか、フラメンコ人口は本場に次ぐ人気ぶり。教室の生徒は30歳から72歳まで約50人で、10年以上続けている人もたくさんいます。レッスン後はコーヒーとお菓子で恒例のおしゃべりタイム。こうした時間も大切にしています。
私自身は教授活動をしながら都内を中心に県内外でステージに立っています。今年の目標はスペインの歴史ある祭典で踊ること。予選会を兼ねて今月17日から都内で開催される日本フラメンコ協会主催の新人公演にエントリーしています。
何は無くともオリーブ油
─26歳で渡西。マドリードで暮らした3年間で地中海食に慣れ親しんだ。
病気で倒れたときに現地の友人が作ってくれたお粥[かゆ]はオリーブ油入り。「何は無くともオリーブ油」というくらいスペインの食卓には欠かせない体に良いとされる油です。トマトなど夏野菜をたっぷり使った冷たいスープ「ガスパチョ」、具材を揚げ煮したスペイン風オムレツ「トルティージャ」など、日本でもおなじみのスペイン料理は、どれもオリーブ油を使っています。野菜、果物、豆類、穀物をたっぷり食べ、家庭料理の多くはトマトなど食材を生かした塩こしょうだけのシンプルな味付けです。
ポジティブシンキングで
─母親の厚子さん(83)は60歳代後半から脳梗塞、心筋梗塞、大腸がんと大病が続いたが、医師の指示をしっかり守ってリハビリに励み、今も家事をこなす。8年前に糖尿病が見つかった父親の兼雄さん(88)は、食事と運動で約20キロの減量に成功。今は薬も飲んでいない。
食事はバランスが大事。炭水化物は取り過ぎないように気を付けて、野菜とタンパク質を毎食欠かさないようにしています。オリーブ油は品質の高いエキストラバージンオイルを選び、料理によってごま油も使います。朝はシリアル、サラダとヨーグルトに果物やジャムを添えます。白砂糖の代わりに蜂蜜を使うなど体に良さそうな食材を選んでいますが、ストイックな食生活ではありません。新潟から取り寄せた魚沼産コシヒカリの白米を食べるなど、おいしいものを食べ過ぎないよう注意しながらいただきます。中学3年生になった娘のマリナは鶏肉、両親は牛肉が好物です。それぞれの嗜好[しこう]を考えながら、3世代が同じメニューで食事を楽しめるよう心掛けています。
─蜂須さんはいつもポジティブシンキング。「誰でも多かれ少なかれ悩みや不安を抱えている。それでもフラメンコを踊れる環境下にいるのは幸せなこと」。生徒たちとの会話の中でよく使う言葉だ。
スペインから気持ちが離れていた時期もありましたが、2年前から再び通い始め、今春は2週間の短期研修へ出掛けてきました。
スペイン人は朝からバル(居酒屋)に集まります。地域のコミュニティーのような場所で、みんなニコニコして歓談しています。小さな問題は日々起こるけれど、視点を変えたり見方を変えれば大したことではないかもしれません。そう考えたら気持ちも楽になるでしょう。感謝の気持ちを忘れずに毎日を大切に過ごしたいですね。