教えて!ドクター

かつて日本人の死因の第1位だった脳卒中。患者数は減少していますが、今なお重い後遺症で要介護状態や寝たきりになる人がいます。脳卒中には血管が詰まる脳梗塞と、血管が破れる脳内出血、くも膜下出血の3種類あります。前橋市大友町、老年病研究所附属病院副院長で脳神経外科医の内藤功さんに脳卒中の予防と早期発見について症例を挙げて助言してもらいました。


脳卒中の最大リスクは 高血圧

40歳過ぎたら脳ドック

症例1 40歳代の男性です。ときどき頭痛やめまいがします。父親がくも膜下出血で亡くなっていて、前触れではないかと心配です。

内藤  頭痛やめまいは脳神経外科外来で最も多い訴えですが、MRI(磁気共鳴画像装掴)を撮るとほとんどの患者さんは異常がありません。くも膜下出血は脳動脈瘤[りゅう]の破裂が原因です。遺伝する病気ではありませんが、家族にくも膜下出血の人がいると、脳動脈瘤の発見率はやや高くなります。

40歳を過ぎたら一度、MRI検在をするとよいでしょう。脳動脈瘤や脳血管の狭窄[きょうさく](動脈硬化)などを見つけることができます。痛みや被ばくなどはありません。検査を機に健康への意識が高まり、早期発見や予防につながります。

隠れ脳梗塞は血圧注意

症例2 60歳代の女性です。脳のMRI検査で白い点が写り、5年前よりも数が増えています。脳梗塞の前兆でしょうか。

内藤  隠れ脳梗塞、大脳白質病変と呼ばれるものです。中高年のMRI検査で軽度な病変はよく見かけるので神経質になることはありませんが、高度なものは今後、脳卒中を起こす可能性が高く、認知機能障害の原因にもなります。隠れ脳梗塞の最大の原因は高血圧なので、積極的な血圧管理が必要です。

早ければ早いほど良い

症例2 医療技術が進歩して脳梗塞も薬で良くなると聞きました。本人や家族が日ごろから心掛けておくことは?

内藤  脳梗塞の危険因子は、高血圧のほか、脂質異常、糖尿病、喫煙などの生活習慣病が挙げられます。また、心房細動(不整脈の一つ)があると心臓に血栓(血の塊)ができやすく、はがれて脳に飛ぶと璽篤な脳梗塞になります。禁煙して適度な運動とバランスの取れた食事を心掛け、規則正しい生活を送りましょう。

脳梗塞の症状には半身まひやしびれ、ろれつ障害、言語障害、めまい、視力障害などがあります。「突然右手足にまひが出て、数分したら治った」といった一過性脳虚血発作が出た場合も脳梗塞に移行する可能性が高く、急いで医療機関を受診することが大切です。

急性期治療は、発症から4時間半以内ならば血栓を薬で溶かす「t-PA静注療法」が行えます。カテーテルで血栓を取り除く「血管内治療」もあります。いずれの治療も時間との勝負。治療が30分遅れると自立できる割合は10%減少するため早期発見、早期搬送に努めてください。これらの治療が行える医療機関は限られているので、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。また、治療には発症時刻、既往歴や内服薬の確認が大切です。お薬手帳の保管場所を決めて、家族で把握しておきましょう。

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