新品種の栽培に意欲
6次産業化を目指す
赤城山北麓の園原湖に近い山あいに、何棟ものビニールハウスが建っている。中をのぞくと、1メートルほどに成長したトマトの苗が4列に並び、整然と緑の行列をつくっている。端から端まで50メートル。実に壮観だ。
オレンジに色付き始めた実が小さな拳ほどに育っている。「もうすぐ収穫が始まります」と、新井さんが日焼けした顔をほころばせた。別の場所と合わせると、ハウスの数は50棟、栽培面積は1ヘクタールに及ぶ。「これから収穫と出荷作業に追われる日々が、秋まで続きます」と表情を引き締めた。
▲ハウスでオレンジに色付いたトマトの実を収穫する新井さん
無添加100%ジュースも
人気の無添加100%のトマトジュース
農家で育った新井さんが、勤めていた会社を辞めてトマト栽培を始めたのは二十数年前。「ワイン作りをやってみたい」というのが、脱サラの動機だった。しかし、ブドウ栽培は断念。父親が細々とやっていたトマトを継ぐことにした。
「試行錯誤の連続でした。近隣の農家に教えを請いながら、新品種の栽培法などを身に付けていきました」。現在、手掛けているのは大玉が「ぜいたくトマト」「桃太郎8」「りんか409」、ミニが「プチぷよ」「トマトベリー」「千果(ちか)」の計6種類。いずれも尾瀬の雫としてスーパーや直売所などに出荷している。
「それぞれ酸味や甘みに特色があり、好みに合わせて食べていただけたらうれしいです」と新井さん。特に自慢の「ぜいたくトマト」は、酸味と甘みのバランスがよく、味の濃いのが特色。また、「プチぷよ」は甘みが強く皮が薄くて、果物のようなミニトマトだ。この2種類については、地元の農協に加工を依頼して、無添加のトマト100%のジュースとして販売している。
手間暇かけ種から育成
「おいしいトマトを食べてもらいたい」というのが、栽培を始めたときからの一貫した思いだ。だから「ぜいたくトマト」を除いて、すべて種から自分の手で育てている。
「手間と時間をかけた分だけおいしくなります」。3月の種まきに始まり、定植に備えた土づくり、発芽した苗を個別のポットに植え替える鉢あげ、そして定植、育苗とさまざまな作業が続く。時期や状況に応じて肥料を使い分ける。水や温度管理の良しあしが収穫量を左右するとあって、研究にも余念がない。収穫は7月から11月初旬まで約4カ月間。妻の紀帆子さん(48)との二人三脚だが、ピーク時はパートやアルバイトを雇っている。「8月半ばを過ぎると甘みが増すので、ジュースにしています。『おいしい』といわれる時が一番うれしいです」。6次産業化認定事業者として、将来は加工も手掛けるつもりだ。