シリーズ からだ元気

カリウムは銀白色のアルカリ金属の1つで、これを高温で熱すると、淡紫色の炎色反応が生じます。生体内にはカルシウムやリンの次に多く含まれていて、人の体内で作ることができないため、毎日の食事から、きちんと摂りたいミネラルです。

現在、日本人に不足しているミネラルはカルシウム、過剰なミネラルはナトリウムですが、カリウムは、このナトリウムと非常に密接な関係にあります。


執筆者略歴 かさはら・よしこ 高知県立高知女子大学家政学科卒。徳島大学大学院修了。長年、管理栄養士・栄養士養成課程で教べんをとる。桐生大学教授を経て2014年度から 山形県立米沢栄養大学に在職。専門は栄養教育。管理栄養士・保健学博士・日本コーチ協会メディカルコーチ。


元気な暮らしに役立つ栄養素のお話…笠原賀子 NPO法人ヘルス・コミュニケーションズ理事長 高血圧の予防に一役! 野菜や果物に多い カリウム

カリウムの働き

カリウムは細胞内液中に最も多く含まれる陽イオン(K+)です。ナトリウムとともに、体内の水分バランスを調整し、体液の浸透圧・酸塩基平衡を維持します。さらに、体内の老廃物の除去や、神経・筋肉の働き、さまざまな酵素活性にも関与しています。特に、ナトリウムの尿中排せつ量を増加させ、血圧低下や脳卒中予防につながることは注目に値します。

カリウムを多く含む食品

カリウムは、油脂類と精製された砂糖以外のほとんどの食品に含まれていますが、生野菜・果物(ドライフルーツを含む)・いも類や種実類などに多く含まれています(図1)

いわゆる健康食品や市販の菓子類にも、カリウムを多く含む食品があります。健康な人には問題ありませんが、腎機能に障害のある人は、高カリウム血症を引き起こす場合があるので注意が必要です。

カリウム摂取の現状と課題

平成26年の国民健康・栄養調査報告では、1人1日当たりのカリウム摂取量(20歳以上)は約2,300mg(男性約2,400mg、女性約2,200mg)で、日本人の食事摂取基準(2015年版)における目安量(表1)とほぼ同じです。しかしながら生活習慣病予防の観点から見た目標量には、まだまだ不足しています。

一方、健康日本21(第2次)における野菜の摂取目標量は1日350gで、実際の摂取量約280gに対し、あと70gほど足りません。厚生労働省では、運動・食生活・禁煙に焦点をあてた「健康寿命を延ばそう!スマート・ライフ・プロジェクト」を推進し、1日に+70g(小皿1つ分多く)野菜を食べるように勧めています。さらに、世界に広がっている「ファイブ・ア・デイ運動」でも「1日に350g以上の野菜と200gの果物を食べましょう」をスローガンに掲げています。

米国では、野菜・果物・低脂肪の乳製品・魚・大豆製品・海藻を増やし、肉やコレステロールが多い食品を減らした、高カリウムで健康的なDASH食(DietaryApproachestoStopHypertension)が、高血圧改善に効果があると認められています。しかし、現在の日本の食生活では、残念ながら、野菜の摂取量を増やすと食塩の摂取量が増える傾向にあるので、味付けには十分注意しましょう。バランスを取るのは、とても難しいことです。

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