デザイナーから転身規格統一し特産品に
高山きゅうり栽培 |
高山村中山 |
後藤 明宏さん(56) |
四方を山々に囲まれた標高600メートルを超える高山村。星空が美しく、県立ぐんま天文台が設置されているこの地に、後藤さんのキュウリ畑がある。
栽培しているのは、村の伝統野菜「高山きゅうり」。長さ25~30センチ、重さ400~450グラムと、太くて大きいのが特色。肉厚で皮が薄く、味はフルーティーで、かんだ時のシャキシャキ感に人気がある。
後藤さんは15アールの畑で露地栽培を行い、年間6トンを生産し、有機野菜の宅配会社などを通じて各地に出荷している。「近い将来、高山きゅうりを規格統一して、村の特産品として全国に広めたい」と夢を広げる。
根強いファンに喜び
東京で空間デザイナーをしていた後藤さんが、実家に戻って本格的に農業を行うようになったのは10年ほど前から。仕事の合間にマイタケの原木栽培に挑戦し、採れたものを農産物直売所に出荷したところ、「天然ものみたい」と反響を呼び、たちまち売り切れに。「農業に転身する大きな自信になりました」と振り返る。
有機栽培や自然栽培を念頭に、ブルーベリーやブドウ、トウモロコシ、枝豆など幅広く手掛けてきた。高山きゅうりもその一つ。「最初は農家から種をもらって作りました。直売所には、渋川や前橋方面から買い求めにやってくる人が多いので、びっくりしました」
昔から地元で栽培されていたのは知っていたし、子どものころに食べた記憶はある。しかし、青々としたスリムなキュウリが普及する中、高山きゅうりに根強いファンがいることに驚きと喜びを感じたという。
品質と収量の安定を
2年前、農家7人で「高山きゅうりの会」を立ち上げた。会長を務める後藤さんは、選別して採取した種を毎年、会員に分けている。「露地栽培のため雑交配が避けられないが、種を選別することによって、昔の高山きゅうりに近づけたい」と話す。
長さ25センチ、重さ400グラム以上で、色はへたの部分が薄い緑のほかは全体的に白。さらに食惑や味など、すべて先人が残してくれた形に戻したい考えだ。
昨年から流通大手のイオンリテールと提携して、関東4県の21店舗で販売されるなど消費拡大が期待されている。「栽培法を工夫して、さらに品質と収量を安定させなくては」と意気込みを語る後藤さん。唐揚げや浅漬けといった調理法の開発などで後押ししてくれる村に感謝している。収穫はこれからが本番。「デザインで培った創造力を、あらゆる場面で生かしたい」