もしもがんが見つかったら、なるべくいい病院で優れた治療を受けたい受けさせたいと思うでしょう。しかし実際にインターネットなどで調べると、さまざまな情報があふれ、何を基準に選択すればいいのか迷い悩んでしまいます。太田市高林西町の県立がんセンター副院長で呼吸器内科医の湊浩一さんは「まずは自分の病気について理解し、がんと向き合うことが大切です」と話します。
最善の
がん治療法の
選び方
がんに対する治療は、大きく手術療法、放射線療法、化学療法(薬物療法)に分けられます。前者の二つはがん細胞がある場所を治療して根治を目指す局所療法、後者の化学療法は薬剤を使ってがん細胞の増殖を抑える全身療法です。がん細胞を小さくしてから手術をしたり、手術の後で再発予防を目的に化学療法を行うなど、三大療法を組み合わせた集学的治療を行うこともあります。
効果が高い標準治療
同じがんでも、治療法は病期(ステージ=0~IVまで5段階)によって異なります。病期は①がんの広がり②周辺のリンパ節への転移の有無③別の臓器への転移の有無―の三つの要素で確定します。治療法を選択する際、病期を把握していると役立ちます。多くのがんは、専門の学会などで科学的に効果が証明された治療法「標準治療Jが定められています。国内の医療機関ならば標準治療を基本に治療ガイドラインに沿った治療が受けられます。
新薬の開発次々と
がんの研究は世界各地で行われ、医療技術は日進月歩で進んでいます。
肺がんを例に挙げると、がんを狙い撃ちする分子標的薬に、EGFR阻害薬(イレッサ、クルセバ、ジオトリフ)があります。腺がんなど「非小細胞がん」と呼ばれるタイプの肺がんで、「特定の遺伝子変異がある人」に有効な飲み薬です。
昨年末、免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボ)が使えるようになりました。がん細胞の周囲にあるリンパ球を活性化させて免疫力を高め、がんを小さくする薬です。ただし保険適用になったのは、「進行がん、または再発がん」で、「最初に使った抗がん薬に効果が認められなかった場合」に限られます。誰にでも効くわけでもなく、悪性腫瘍が半分以下になるのは2割程度です。
働きながらがん治療
がんと向き合いながら働く人もいます。化学療法の初回は入院して治療することが大半ですが、2回目以降は定期的に検査をしながら外来で治療することが多くなったことも一因です。
ただし、がんの治療は決して易しいものではありません。日常生活の制約が増え、QOL(生活の質)が下がることも否めません。積極的な治療はせずに痛みなどの症状を取り除きながら過ごす緩和療法を選択する人もいます。
どんな治療を受けるにしても、正しい情報を集めてよく学ぶことが大切です。セカンドオピニオン制度もあります。十分に納得した上で選んだ治療法であれば、それが一番よいのではないかと思います。