手や足にしびれが出て「脳卒中の前兆かもしれない」と心配になったことはありませんか。一ロにしびれといっても原因はさまざま。大半は老化や使い過ぎなどによりますが中には脳や脊髄に重篤な病気が隠れていることも…。前橋市大友町老年病研究所附属病院の副院長で神経内科医の甘利雅邦さんは「自己判断せずに原因を調べることが大切です」と呼び掛けます。
しびれを
放置しては
いけない
神経にダメージ
しびれは、神経がダメージを受けることで現れます。その種類は①ピリピリ、じりじり、チクチクなどの異常感覚②痛みや冷たい惑覚、触った感覚が鈍くなったり、感じなくなる感覚低下③自分の意思で手足が動かない、力が入らないといった運動まひ一の三つです。
長時間正座をしていると脚がしびれて感覚が無くなりますが、時間がたつと治るので心配する人はいません。問題なのは脳卒中など命に関わる病気や、QOL(生活の質)を大きく低下させてしまう病気が隠れている場合です。
末梢神経の障害
神経には、脳からの指令を全身に送る中枢神経(脳と脊髄)と、体の器官に網の目のように張りめぐらされた末梢[まっしょう]神経があります。
指先のしびれの原因として多い手根管症候群は、手首の付け根にある手根管に炎症が起こり、管の中を通る手の神経の一部(正中神経)が圧迫されるために症状が出ます。しびれの大半はこうした末梢神経の障害が原因ですが、糖尿病や自己免疫疾患の膠原[こうげん]病などによって複数の末梢神経が障害される場合もあります。多発性神経炎と呼ばれる症状です。改善するには原因となる病気を治療することが肝心です。
背骨(脊椎)にある脊柱管には、太い神経が走っています。脳から腰まで延びる一本の神経の束で、これが脊髄です。脊柱管狭窄[きょうさく]症や椎間板ヘルニア、脊椎の腫瘍などで脊髄が圧迫されたり傷付くとしびれの症状が出ます。首の骨(頸椎[けいつい])の周囲に病気が隠れている場合もあります。中枢神経の障害はエックス線や磁気共鳴画像装置(MRI)による検査で診断が付きます。
また、ストレスなど心の病気からしびれの症状が出る場合もあります。
怖い脳卒中
しびれの症状で最も注意したいのが脳卒中です。脳梗塞や脳内出血で脳の細胞がダメージを受けると神経障害が出ます。「半身のまひ」や「ろれつが回らない」など他の症状と同時に出やすいのが特徴です。脳梗塞の前触れ、一過性虚血発作で数分から数時間の手足のしびれが出ることもあります。
原因が分からないしびれは放置しないこと。神経内科で鑑別することで早期治療につながり、過度な心配によるストレスからも解放されます。