安心・安全を第一に
土壌改良に力を注ぐ
栄養価が高く、滋養強壮にいいと言われるヤマト芋。古くから産地として知られる太田市周辺では、地元の人たちが「畑のウナギ」と呼び、情熱を持って栽培に打ち込んでいる。
田端さんもその一人。「農家を継いで40年になります」。父の代ではゴボウやネギなども栽培していたが、今はヤマト芋に専念している。毎年70トン余りを生産し、直売所の「道の駅おおた」などに出荷している。
数年前からコンビニ販売の「とろろそば」に「田端さんちの大和芋」として使用されており、年間の出荷量は道の駅を上回る。「最近はネットでの通信販売も増えています」
ヒミツは有機肥料
ヤマト芋は乾燥に弱く、水はけの良い肥沃な土壌を好む。太田市周辺は利根川の恵によって栽培に適した大地が広がり、県全体の生産量の8割以上を占めている。
「恵まれた環境を最大限生かして、おいしいヤマト芋をたくさんの人に届けたい」と田端さん。種芋の植え付けから収穫、出荷まで一連の作業を、妻のよしみさん(60)と力を合わせて行っている。
収穫は11月から3月まで。間もなく始まるが、1年で最も忙しいのは春の土作りと植え付けの時季だという。「収量は天候にも左右されますが、高品質と収量アップには良い土作りが欠かせません」。土壌改良に力を注ぎ、肥料にも工夫を凝らす。「化成肥料はほとんど使用せず、油かすや魚粉、肉骨粉などをブレンドして発酵させた有機肥料を使っています。低農薬にも努めており、安心して食べていただけます」と自信をのぞかせる。
オリジナル品種「とろりん」
ヤマト芋は、長芋に比べて粘りとこくがあり、きめの細かいのが特徴。特に太田市産のヤマト芋は、すりおろしても箸でつまめるほどの強い粘りで、独特の風味や甘みとともに市場での人気を集めている。
形は棒状とイチョウの葉の2種類あるが、「どちらも同じ種芋からできます。味や風味は全く違いがありません」と、田端さんは解説する。実は夏場が高温で少雨の年はイチョウの形に、冷夏の年は棒状になる傾向があるという。
本県には、県農業技術センターが長年かけて開発したオリジナル品種「ぐんまとろりん」がある。皮をむき調理しやすい棒状に人気が高いことから、棒状になりやすいヤマト芋の育成と選抜を繰り返して、新品種として確立した。「昨年は太くて長い棒状のものがたくさん収穫できました」と田端さん夫妻。今年の出来栄えも楽しみにしている。