キノコは古代から森を守り、食を豊かにしてきました。天然のキノコは森の生態系の維持と保全に欠かせない働きをしています。近年は、人々の健康志向の高まりとともに、低エネルギーで、ビタミン・ミネラルをはじめ、栄養いっばいで、機能性も高いキノコに注目が集まり、健康の維持増進や生活習慣病の予防効果などが期待されています。
執筆者略歴
かさはら・よしこ 高知県立高知女子大学家政学科卒。徳島大学大学院修了。長年、管理栄養士・栄養士養成課程で敬べんをとる。桐生大学教授を経て2014年度から山形県立米沢栄養大学に在職。専門は栄養敦育。管理栄養士。保健学博士・日本コーチ協会メディカルコーチ。
森の恵み
キノコという言葉は、木の幹や樹が生い茂っている森によく見られるという「木の子」に由来し、秋を代表する味覚です。我が国に自生しているキノコ類は約4000~5000種もあり、そのうち食用となるキノコは120種類ほどと考えられています。平成26年度の群馬県のキノコ生産量は約8000t(全国第10位)、生産額は約47億円の、きのこ生産県です。
ここでは、日常、良く食べるキノコの特徴についてご紹介しましょう。エノキタケは、傘が小さく、柄が細長いもやし状で、適度にぬめりがあり、歯切れが良いキノコです。味付け瓶詰の加工品は、皆さまも良くご存知の“なめ茸”と呼ばれます。
キクラゲは、ブヨブヨして透明感のあるゼラチン状で、乾燥品は黒色をしています。クラゲに似た独特のコリコリした食感が中華料理でおなじみです。
シイタケは、食用きのこの代表です。どんこ(冬姑)は、低温期に成長し傘があまり開かないうちに採取した厚いもの、こうしん(香信)は、傘が100%開傘してから採取した薄いものです。良質な乾しいたけは肉厚でカサの裏が鮮やかな山吹色をしています。
ホンシメジの傘はまんじゅう形、柄は白く下方が太いキノコです。昔から「香りマッタケ、味シメジ」といわれています。
エリンギの傘は平坦で茶褐色、ラッパ形をしています。ひだは白くて柄が太く、癖がなくて歯ごたえが良いので、和洋中、どんな料理にも合います。
マイタケは、カサが重なりあって株になり、歯触りが良いキノコですが、数種類のプロテアーゼ(たんぱく質分解酵素)が、卵白中のアルブミンを分解するため、生のマイタケを茶碗蒸しに使用すると固まりません。
マッシュルームの和名は「つくりたけ」です。ブラウン、クリーム、ホワイトの3種類があります。
キノコの王様と言われるマツタケの人工栽培はまだ確立されていません。良くしまった肉質で特有の芳香があります。
ナメコは、表面を覆った透明な粘質物のぬめりが特徴です。
いっぱい食べて健康に
キノコには、ナトリウムを体外に排泄して高血圧の予防に役立つカリウムや、マグネシウム、リン、亜鉛などさまざまなミネラルがバランスよく含まれています。
さらに、免疫力を高め、抗腫瘍効果のあるβ‐グルカン(レンチナン)、血中コレステロール値や血圧の低下作用を示すレンシチン(エリタデニン)、皮膚の老化を防止する抗酸化物質エルゴチオネインなど、健康に寄与する機能性成分も知られています。
一方、キノコには、シイタケのレンチオニン、マッタケのマッタケオール、ケイ皮酸メチルなど特有の香りがあります。さらに、干しシイタケには、グアニル酸(旨味成分)が含まれていて、グルタミン酸(昆布の旨味成分)との相乗効果により、おいしさを増します。しかも、これらレンチオニンやグアニル酸には、血小板の凝集を抑制する作用があって、血液をサラサラにする効果があるといわれています。
このようにキノコは低エネルギーで、栄養いっばい!健康管理にも一役買う優れもの。冷凍保存をすると、旨味も増し一石二鳥。地産地消にも役立つキノコを今一度見直してみませんか。