希少種の「雪割茸」
地元の名産品に
全国有数のキノコ県として知られる本県は、シイタケをはじめマイタケ、ナメコ、シメジなどさまざまな種類のキノコが栽培されている。かつては切り出したままの原木からキノコを発生させる「原木栽培」が主流だったが、近年はおがくずなどを培地とした「菌床栽培」が急速に普及している。
「好きなキノコの栽培と研究に携わることができて、毎日がとても充実しています」と話す金子さん。みなかみ町後閑にある「月夜野きのこ園」に入社して3年。希少種といわれる「雪割茸(ゆきわりたけ)」の栽培と安定出荷に向けて全力を注いでいる。
菌と培地と環境が命
創業20年を迎えた月夜野きのこ園は、シイタケの菌床栽培を中心に、希少種キノコの生産と販売などを手掛けている。大泉高時代、バイオテクノロジーを学んだ金子さんはキノコに興味を持ち、県立農林大学校を経て同社に就職した。
入社直後から栽培を担当している雪割茸は、30年ほど前に富士山の麓で菌が発見された野生種。「地元の名産品を作りたいという一心で、6年前から栽培に取り組み始めました」と、金子崇範社長(41)は振り返る。
市場ではあまり目にすることがないこのキノコは、ブラウンエノキによく似ているが、全長は25センチと長身で、上部はクリーム色をしており、シャキシャキとした食惑と甘み、とろみの強いのが特色。「私たちはこのおいしいキノコをもっと世の中に広めたいと、日々研究を重ねています」と金子さん。
菌床作りから種植え、培養・生長期間を経て収穫を迎えるまで約2カ月。この間、栽培室では二酸化炭素の濃度や温度、湿度などの管理に神経を使う。「キノコ栽培は菌と培地とより良い環境づくりが命なのです」
安定収量が課題に
生産量は季節によって異なる。秋冬は多いときで1日30キロ、夏場はその半分くらいという。希少性だけでなく、おいしさが人気を呼び、近隣の旅館や飲食店、都内のキノコ専門店、高級スーパーなどから注文が増えている。しかし、手作業が多く大量生産は難しく、「安定した収量の確保が今後の課題」と言う。
希少品種としてもう一つ栽培に取り組んでいるのが、同社オリジナルの「谷川茸(たにがわたけ)」。キノコ博士として知られる川合源四郎さんが、エリンギとバイリングを掛け合わせてできた品種を引き継ぎ、地元の名峰の名に改めて生産に力を入れている。
「谷川茸も手間がかかり大量生産はできませんが、エリンギより甘みが強くこくがあります。雪割茸とともに研究を重ね、食卓にお届けして多くの人に食べていただきたい」