元気流儀インタビュー

女将として松乃井リゾート4軒の旅館を取り仕切る多忙な日々を送っている。自然豊かなみなかみ町で生まれ、湯の町のにぎわいを取り戻そうと奮闘している。旅館スタッフとともに作った地元の野菜を使った料理は食の安全を求める宿泊客にも好評だ。毎朝食卓に採れたて野菜を並べてくれた兼業農家だった両親への感謝と思いがおもてなしの元となっている。

うまみ豊かな 大地の力取り込む

食は健康に直結

旅館で育てているカポチャ。太陽の光を満遍なく浴びられるようにつるして栽培している。収穫後1力月ほど寝かして熟した後、旅館の料理に使う

―沼田市の老神温泉近くの農地2・5ヘクタールでカボチャやジャガイモ、食用花、ハーブなど30種類の農作物を育てている。自家製野菜が好評でみなかみ町の猿ケ京温泉近くの農地で栽培準備を進めている。安心できる食材を提供したいとの思いで、低農薬で自然の力を生かした農法を取り入れた。5年かけて化学肥料を抑えた土作りをした。

両親が兼業農家だったので、小さい頃からよく農作業の手伝いをしていました。基本的に旅館で提供する農作物は、新しい知識を持っている若手従業員が中心となって育てていますが、収穫のタイミングなど、時折アドバイスすることもあります。寒さで作物が凍らないように毛布を掛けるといった両親が教えてくれた知識が役に立つこともあります。

―自宅の家庭菜園でもトマトやキュウリなどを育てている。2年前に父の勇雄さんが亡くなり、母のたかさん(80) の健康維持を一層心掛けている。今夏は母のために高血圧によいとされるゴーヤーを育てた。

ゴーヤーチャンプルーを作ったら母も喜んで食べてくれました。食は健康に直結すると思います。旅館では2年前に野菜バイキングを始めました。自家製野菜を中心にオカヒジキやキュウリメロンといった少し変わった野菜もそろえています。新鮮な野菜にかぶりついて自然の力を取り入れてほしいので、生野菜やしゃぶしゃぶ、グリル野菜にして提供しています。オリーブオイルや自家製からしみそ、塩などのシンプルな味付けで食べると、野菜本来のうまみや風味をより感じていただけます。旅先では日常を忘れて楽しむぜいたくな食事が人気ですが、健康志向のお客さんも増えてきています。野菜を山盛りにして召し上がる人がいるとうれしくなります。

冬でも運動を

お年寄りでも気軽に挑戦できる吹き矢。腹式呼吸を使うので健康増進に効果があるとされる

―町スポーツ推進委員を2009年から続けている。外出することが少ないお年寄りや子どもたちにバドミントンやスポーツ吹き矢、卓球などのスポーツを紹介して、健康的に汗を流す楽しさを伝えている。

利根沼田地域は雪が県内でも多く降る地域なので、どうしても冬場は引きこもりがちになってしまいます。家にいるばかりでは健康に悪いですから、冬に気軽にできる室内競技を中心に楽しんでいます。地域の運動会も地域の仲間と一緒に協力して企画しています。60歳以上を対象にした「ベテラン玉入れ」など体力差をあまり感じないような競技を用意すると参加者も増え、全ての世代が集う運動会になりました。

旅館と古里守る

―湯の町みなかみで生まれ育ち、観光ビジネスの講師など長く観光業に携わってきたおもてなしのプロ。12年に松乃井グループの女将に就き、水上、老神、猿ケ京、新潟・大湯の県内外4軒の女将を兼任。景気の低迷や団体旅行の減少で衰退する各地の温泉街を盛り立てようと奮闘している。女将になってからすぐに、仕事に役立つと思い、障害者や高齢者を手助けするサービス介助士と温泉入浴指導員の資格を取得した。宿泊客からの入浴の相談にも応じている。

小さい頃、駅前も温泉街も活気がありました。昔はダムやトンネルの建設など土木工事も多かったので、宿泊客が次々と来る時代でした。今は「もう一度来たいな」と思っていただけるようなおもてなしが大切です。一番心掛けていることは、お客さまを笑顔にすることです。おもてなしの成果が笑顔につながります。笑顔でお帰りになったお客さまは、またお見えになっていただけますから。

観光産業は地元にとって大切な収入源。雇用場所が確保されていれば、若い人たちも古里に残ってくれます。旅館を守ってゆくことが古里を守ることにつながると思っています。

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