甘味がたっぷり
鍋や煮物の具に
伊勢崎市郊外の下植木地区。ここに200年以上も前から特産物として栽培が続けられてきた伝統野菜がある。地区の名を冠した「下植木ネギ」である。
白い根の部分は20センチ、緑色をした葉の部分は50センチほどの長さで、太いところは直径5センチと、全体的にずんぐりした形をしている。「一般的な細長いネギとは異なり、下仁田ネギによく似た形をしています」と小林さん。収穫期を迎えたネギ畑に立つと、土中から1本引き抜いて見せてくれた。
太い白根から薬が扇状に広がる様は、本当にそっくり。「熱を加えるとトロッとして甘みが出るので、鍋や煮物に向いています。この点も下仁田ネギと同じです。ぜひ食べ比べてみてください」と笑顔で話す。
保存や普及にも尽力
農家育ちの小林さんが本腰を入れてネギ栽培を始めたのは、勤めていた会社を定年退職してから。現在は「下植木ネギ研究会」の副会長を務め、普及にも尽力している。
同会は30年ほど前の1989年に発足。急速な都市化に伴う農家の減少などにより、下植木ネギの存在が危うくなったのがきっかけだった。市の特産農産物育成事業の助成を受けて、採種による系統選抜と形質保存を行うとともに、講習会や現地検討会などを開いて、甚本形の維持に努めている。
現在の会員は10人。協力し合いながら各人で栽培を行っており、栽培面積は合わせて80アールほどだという。発足時に比べて会員は減少し、高齢化も進んでいる。「後継者を育成しなければ、貴重な伝統野菜を失うことになりかねない」と危機感を募らせる。
ブランド名「権太夫[ごんだゆう]」
小林さんは約10アールの畑で下植木ネギを栽培。毎年10月末に種をまき、翌年の6月に優良な株を定植する。成長を待って12月から1月にかけて収穫し、宅配便で直接顧客に送るほか、農協に出荷している。
「品種改良が行われていないので、夏の高温や連作に弱く、病害虫に気を付けなくてはいけません。特に温度が高く湿気が多いときは、軟腐病に要注意です」と小林さん。病害虫除けに毎年、ネギを植えた畝の間に麦をまいている。「成長した麦は地温を下げたり、病害虫を引き寄せてネギを守ったりしてくれます」。また、肥料に独自の工夫を重ねて、糖度アップや品質の向上に努めている。
今年から平均糖度20度以上、サイズが4段階で最大の3Lを甚準に厳選したネギを「権太夫」のブランド名で販売を始めた。「すき焼きや鍋物などに、会員ー同が自信をもっておすすめします」