高齢になると体力だけでなく視力も衰えるものです。視力が落ちてかすんだり、物がゆがんで見えづらくなったりしませんか。「年のせいだから仕方ない」と放置しがちですが、実はこうした症状は老化が原因とは限りません。前橋市荒牧町の宮久保眼科院長の宮久保純子さんは「生活習慣病と関連し、失明する危険が潜んでいる場合もあります。日ごろから住民健診や人間ドックを受け、目や全身の健康管理をしましょう」とアドバイスします。
見えづらいのは
加齢が原因!?
視力に関わる機能が低下
目の構造はよくビデオカメラに例えられます。カメラにはレンズや絞りがありますが、これは、目の虹彩[こうさい]や水晶体にあたり、自動的にピントも合わせられます。カメラに入った光はフィルムに画像を映し出し、この画像を電気信号に変えて、テープやディスクに記録させます。これは、目の網膜と視神経にあたり、画像を脳に送って、頭の中で画像を見ています。これらの機能が加齢により低下しても不思議はありません。
80歳過ぎれば白内障に
高齢者の視力低下の主な原因に老眼、白内障、加齢黄斑変性、緑内障、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞[へいそく]症などがあります。これらの病気は、「眼の老化」「体の老化」や「生活習慣病などの病気」が関係していると考えられます。
老眼は眼の老化の最も代表的な症状です。柔らかいはずの水晶体が加齢とともに弾力を失いピントを合わせる力が弱くなり生じます。さらに、加齢とともに水晶体が混濁して光がうまく通過できなくなると、視力低下、かすみ、まぶしさなどの症状が特徴の白内障になります。80歳を過ぎればほぼ100%の人が白内障です。
加齢黄斑変性は生活スタイルの欧米化に伴い日本人に増えている病気です。視力をつかさどる黄斑部が加齢により障害されることで視野の中心部が見づらくなり、生活の質(QOL)が大きく下がります。喫煙のほか、高血圧症、脂質異常症、動脈硬化などの生活習慣病との関連なども指摘されています。
網膜症や緑内障で失明も
緑内障と糖尿病網膜症は途中失明の原因で上位を占めています。眼圧の影響で視神経が障害されて視野が欠けてくる緑内障の多くは、初期の自覚症状がなく、健康診断などの眼底検査で見つかることが少なくありません。同様に、糖尿病では網膜の毛細血管が障害され糖尿病網膜症を合併する場合があります。この病気の初期も自覚症状がありません。内科からの紹介や健康診断で見つかることが大半です。若い時に発症したこれらの病気を治療しないままにしておくと、視力低下に至る危険があります。
また、急な視力低下を生じる網膜静脈閉塞症は、生活習慣病の動脈硬化や高血圧により網膜静脈が閉塞し出血する病気です。日ごろからの内科の治療が重要ですが、過労になるほど無理をしないことも大切です。
高齢者の視力低下にかかわる病気の多くは、早い段階で発見し、治療を開始することで、視力低下を防ぐことが可能になってきています。早期発見、早期治療のためには、片目ずつ「視力低下」や「ゆがみ」などがないか見え方を自己チェックすることと、健診を受けることが大切です。何かあればすぐに眼科を受診しましょう。