女性は更年期以降、女性ホルモンの影響で体が変化します。特に閉経後は生活習慣病のリスクが高まリ、体の不調を来しやすくなります。高崎市若松町、佐藤病院の院長で産婦人科医の佐藤雄一さんは「女性ホルモンの減少によって血管が傷付きやすくなるなど、さまざまな疾患を発症しやすい体になリます。80、90歳になっても生き生きと暮らせるよう、年齢を問わず今から生活習慣を見直すことが大切です」と呼び掛けます。
更年期から変化する
女性の体
閉経後はリスク高まる
女性ホルモンの一つエストロゲンは生殖機能を保つだけでなく、動脈硬化を抑えたり骨密度を安定させたり免疫力を保つなどの働きがあります。閉経前後の5年間、約10年を更年期と呼びますが、女性ホルモンが減少してバランスが乱れるこの時期はさまざなま身体症状や精神症状が現れます。生理不順や不正出血から始まり、ホットフラッシュ(ほてり)や関節炎、不眠、疲労感、抑うつなどで知られている更年期症状です。
閉経後はさらに病気のリスクが高まります。日本人女性の平均閉経年齢は約50歳、平均寿命は87.05歳ですから、40年近くあります。加齢とともに発症しやすい病気も増えます。まずは閉経後に注意したい病気を知ることから始めましょう。
骨密度減り動脈硬化進む
閉経後は脂質代謝が落ちてコレステロールをためやすい体になり、血圧も上昇して動脈硬化が進みます。心筋梗塞や脳卒中を引き起こしやすい状態です。また、骨を強くする働きを失うことで骨密度も減少します。こうした変化は男性にも起こりますが、女性は閉経を機に一気に変わるため「今まで大丈夫だったのに」と突然の変化に驚く人も少なくありません。
閉経前から子宮筋腫が増え、50歳代になると子宮体がんや乳がんが見つかりやすくなります。30、40歳代でピークを迎える子宮頸[けい]がんも、免疫が下がる60、70歳代に2度目のピークを迎えます。
生活習慣、食事と運動
卵巣機能の衰えを防ぐことはできません。女性ホルモンの減少によって発症しやすい病気にならないよう、日頃から生活習慣をあらため、栄養バランスのよい食生活と適度な運動を心掛けましょう。
血管を保護するには、血糖値が上がらないような食事をすることです。特に甘いもの、砂糖の取り過ぎに注意してください。日本人女性は貧血が多く、住民健診の血液検査では見つかりにくい鉄欠乏による隠れ貧血(潜在性鉄欠乏症)も少なくありません。
幸せホルモンと呼ばれるセロトニンを増やすことも大切です。タンパク質やカルシウムなどバランスの良い食事を取り、外で体を動かして日光浴をします。友人との楽しいおしゃべりも効果があります。
主に肝機能や脂質異常を調べるメタボ健診だけでなく、がん検診や貧血、甲状腺の病気、骨粗しょう症など女性がなりやすい病気に意識しながら、定期的に健康診断やがん検診を受け、早期発見、早期治療につなげることが健康寿命をのばす秘けつです。