学校給食、風呂上がり、朝食、どのような牛乳を飲むシーンが思い浮かびますか。
牛乳は日本でも古くから飲用されてきましたが、戦後学校給食への脱脂粉乳の導入から本格的に摂取量が増えてきたといえます。しかし、欧米に比べると飲用量は少なく、近年は減少傾向にあります。今回は牛乳の栄養的役割について紹介します。
執筆者略歴
うえにし・かずひろ
女子栄養大学 栄養生理学研究室 教授
徳島大学医学部栄養学科卒。
徳島大学大学院栄養学研究科修士課程修了。
雪印乳業生物科学研究所を経て、1991年に現在の女子栄養大学に勤務。
2006年より現職。管理栄養士・栄養学博士。
専門は栄養生理学、とくにヒトを対象とした力ルシウムの吸収・利用に関する研究、スポーツ選手の栄養アセスメントとそれに基づく栄黄サポートなど。
栄養
牛乳といえばカルシウムが思い浮かびます。確かに牛乳には多くのカルシウムが含まれていますし、そのカルシウムの吸収率が高いという特徴もあります(表1)。
しかし、牛乳にはカルシウム以外にも多くの栄養素が含まれています。表2は1本(200ml)の牛乳を飲んだ場合の、1日の必要量に占める割合を示したものです。カルウムの寄与率は36.7%と高く、1本の牛乳を飲めば1日の必要量の1/3を摂取できることになります。
カルシウム以外では、ビタミンB2、ビタミンB12、パントテン酸、リンなどの寄与率が高く、さらにタンパク質、カリウム、ビタミンA、ビタミンDなどの重要な供給源ともなります。
一方、牛乳を飲むと太ると思っている人も多いですが、エネルギーの寄与率は6.5%と決して高くはありません。エネルギーを気にして、重要な栄洒索の摂取が減ってしまうのは、望ましいことではありません。脂質が15.0%とすこし高いですが、気になる方は低脂肪乳などを利用するのもよいでしょう。
ヨーグルトやチーズもおすすめ
牛乳には乳糖が含まれています。人によってはこの乳糖を小腸で分解することができず、大腸まで送られ、腸内細菌の働きによってお腹がゴロゴロするなどの不快な症状がみられる場合があります。このような人でも、温めた牛乳を少しずつ飲めば大丈夫な場合もあります。また、このような人でも、ヨーグルトやチーズは乳糖が少ないので、症状が出ることは少ないと思います。牛乳が苦手な方はぜひ試してみてください。牛乳もヨーグルトもチーズも手軽に摂取できるところが利点です。毎日の食生活に少しずつ、取り入れるようにしてはいかがでしょうか。
最近は散歩や、ジョギングやスポーツジムに通って運動を行っている人も増えてきました。運動後のビールも美味しいですが、運動直後には1杯の牛乳がおすすめです。
手軽に摂取できるという点からもおすすめ。
最近のスポーツ栄養学では、運動直後にタンパク質を摂取することが勧められています。運動後の牛乳摂取はもちろんですが、チーズの摂取も、筋肉の回復にも有効です。
高齢者
ロコモティブシンドローム、フレイル、サルコペニアなど新しい言菓がどんどん登場してきています。これらに共通していることは骨や筋肉が弱くなって、体を動かすことが困難になり、要介護や要支援の状態になりやすくなるということです。
その予防には栄養、食事と運動が大切です。栄養のなかでも重要なものは、タンパク質とカルシウムです。高齢者では筋肉量が減少していきます。それを予防するためには、適量のタンパク質摂取が必要ですが、体重当たりでみると若い人よりも必要撒は多くなります。高齢者では肉類の摂取が少なくなる人も多いですが、そのような時には牛乳・乳製品の摂取がおすすめです。
筋肉を維持するためには、タンパク質の摂取、特に分岐鎖アミノ酸(BCAA) の摂取が大切です。近年、BCAAの中でもロイシンが注目されており、ロイシンを強化したサプリメントも販売されています。
牛乳・乳製品は良質のタンパク質源であり、BCAAはもちろん、ロイシンも多く含まれています。
牛乳は成長期の子供たちだけではなく、高齢者の健康のためにも有用な食品といえるでしょう。