子どもの頃、もしかすると、今でも、ニンジン大嫌いという人も多いのではないでしょうか。ニンジン嫌いの一因でもあった特有のにおいは、最近、少なくなっていて、とても食べやすくなっています。
ここで1つ、ニンジン嫌いのお助けレシピ。ニンジンのグラッセを作る時に、たっぶりのレモン汁を加えてみてください。はてはて、どんな味に変身するでしょうか?
執筆者略歴
かさはら・よしこ
高知県立高知女子大学家政学科卒。徳島大字大字院修了。長年、管理栄養士・栄養士養成課程で教ベんをとる。桐生大学教授を経て2014年度から山形県立米沢栄養大学に在職。専門は栄養教育。管理栄養士・保健学博士・日本コーチ協会メディカルコーチ。
栄養
ニンジンの英語名キャロット(carrot)は、ニンジンのだいだい色のもととなっているβ-カロテン(carotene)に由来するといわれています。カロテンは、カロテノイドの1種で、主にα-カロテンと、自然界に最も多く存在するβ-カロテンの2種類があります。ニンジンをはじめ、カボチャ・ブロッコリーなどの色鮮やかな緑黄色野菜や、ミカンなどの相橘類、スイカなどには、このβ-カロテンが多く含まれています。
ところで、β-カロテンは体内でビタミンAとして働きます。ビタミンAは脂溶性ビタミンの1つで、サプリメントなどからの過剰摂取には十分な注意が必要(表1、本誌2016年7月号(vol.4)参照)です。しかし、β-カロテンからのビタミンAへの変換は、体内で、厳密に調整されているため、ビタミンAの過剰症は起こりません。
ビタミンAは、視力の維持や夜盲症を予防し、強力な抗酸化力から、皮膚や粘膜を強くしたり、免疫力をアップする働きがあります。子どもの夜盲症を予防するために、ビタミンAを油に入れて提供している発展途上国もあります。
ニンジンのβ-カロテン量は非常に多く、中くらいのにんじんを2~3センチ程度食べるだけで、1日当たりのビタミンAの推定平均必要量(表1)を摂ることができます。
また、β-カロテンは水や熱に強く、ゆでても栄養量の損失はほとんどありません(表2)。さらに、油に溶けやすいので、油といっしよに調理することで吸収率があがります。きんぴらや精進揚げ、胡麻あえなどは、β-カロテンを効率よく摂取するのに適しています。
最期に
「元気らいふ」2017年2月号(Vol.11)に掲載された牛乳中のカルシウム。このカルシウムは、牛乳を代表として、その他のいろいろな食品にも含まれています。ニンジンの葉にも、牛乳と同じくらい(普通牛乳100gあたりカルシウム110mg)たくさんのカルシウムが含まれています(表2)。他にはどんな食品に含まれているでしょうか。お子さんやお孫さんと一緒に、右のクロスワードパズルを楽しくお話をしながら解いてみてください。食べ物を選ぶ際の参考となることでしょう(図1)。
実は、このクロスワードは「いろいろな食品を食べる」ことの大切さを示しています。平成28年6月に一部改正された食生活指針(文部科学省・厚生労働省・農林水産省決定)には、「主食・主菜・副菜を基本に、食事のバランスを」とあり、その中にも「多様な食品を組み合わせましよう」と示されています。さらに、近年「いろいろな食品を食べる」ことは、老化のスピードを遅らせ、認知機能低下を抑制する可能性があることがわかってきています。
皆さんが健康で豊かな生活を送ることができますように……。