彩りと甘さが特色
6次産業化に意欲
国指定史跡の七輿山古墳から南に800メートルほどの田園地帯に広がるニンジン畑。収穫機械を巧みに操作し、大きく育ったニンジンを掘り出す田村さんの日焼けした顔に、精気がみなぎる。
「機械化が進んでいるので、腰への負担がだいぶ楽になりました」と田村さん。痛めた腰をかばいながら、収穫作業を続けてきた。「3月いっぱいで終了となります」と、少しホッとした様子。
栽培しているのは、県内でも珍しいフルーツニンジン。長さが16~27センチと小ぶりで、ホワイト、イエロー、オレンジ、パープル、ダークパープルの5色あり、豊かな色合いが特色。生食を“売り”にしており、サラダなどへの彩り効果が注目されて、徐々に人気が高まっている。
定年後に一念発起
農家の長男に生まれながらサラリーマン生活を送ってきた田村さんが、農業に本腰を入れ始めたのは、勤めを定年退職した60歳から。知人のアドバイスを受け、従来の米麦をやめて野菜の栽培に主力を置くことにした。
「四季を通して出荷ができるように、栽培品目を選びました」。ニンジンのほか、ナス、カリフラワー、ジャガイモ、ラディッシュなどを手掛けている。
主力のニンジンは栽培面積が80アールで、8月下旬から9月上旬にかけて種まきし、収穫は11月から翌年の3月まで4カ月間続く。土から掘り出したニンジンは、へたの部分をきれいに切り落とし、水洗いした後、長さによって選別機でSSからLLまで5段階に分けて袋詰めし、地元の直売所やスーパーとともに、JAを通して首都圏にも出荷している。
「細かな作業が多いので、従業員と3人のパートさんの手を借りてこなしています」
人気の100%ジュース
フルーツニンジンは、従来のニンジンと違って特有の臭みが少なく、苦手な人でも食べやすい。しかも、色の濃いパープルやダークパープルは甘みが強く、ジュースにしても飲みやすい。
そこに目を付けた田村さんは、古墳の名前を借りて「ななこしフルーツ人参ジュース」のブランド名で委託製造し、販売している。「紫色のニンジンにはアントシアニンが多量に含まれています。フルーツ人参だけの100%ジュースなので、健康志向や美容意識の高い人にとても喜ばれています」
加工品はジュースのほか、ジャムやピクルスを作っていたが、現在は開発中の漬物に力を入れている。「歯ごたえと甘さが、とてもマッチしています」と田村さん。昨年、株式会社「アグリッパー21」を立ち上けた。6次産業化に向けて着々と準備を進めている。