年齢を重ねると増える不整脈は、脈が飛ぶ、乱れる、動悸[どうき]がする、などの自覚症状や、健康診断で見つかります。一口に不整脈といっても、脳梗塞の原因になる「心房細動」や突然死を招く「心室細動」など種類はさまざま。前橋市亀泉町の県立心臓血管センター循環器内科第二部長、内藤滋人さんは「早期治療すれば脳梗塞の発症を大きく減らしたり、突然死を未然に防ぐことができます。自覚症状が無くても、健康診断で心電図検査を受けてほしい」と強調します。
放置してはいけない
不整脈
異常は心電図で見つかる
心臓はポンプのように収縮と拡張を繰り返しながら全身に血液を循環させています。ドキン、ドキンと刻む一定のリズム、実は電気刺激によって心筋(心臓の筋肉)が動いているのです。
安静時の脈拍は1分間に60~100回。不整脈は電気刺激のシステム(刺激伝導系)に何らかのトラブルが生じて、脈拍が遅い、速い、リズムが乱れる、脈が飛ぶ(期外収縮)などの異常が起こった状態です。種類はさまざまで、原因によって治療法も異なりますが、自覚症状の有無にかかわらず心電図検査で波形を調べると詳しい診断がつきます。心電図検査には通常の心電図のほか、24時間心電計、携帯型心電計、植え込み型心電計などさまざまな装置があり、不整脈を捉えてくれます。
心房細動から脳梗塞に
加齢とともに増える心房細動は、心房(心臓の一部)が不規則に震えるために内部の血液がよどんで血の塊(血栓[けっせん])ができやすくなります。血流に乗って脳の血管をふさぐと、脳梗塞の3分の1を占める心原性脳梗塞を起こします。心房細動は脈拍が不規則に乱れて速くなるのが特徴で、年齢や進行度(発作性、持続性、慢性)、高血圧症などの疾患の有無によって治療法を選択します。
血液を固まりにくくする薬、ワーファリンは、服用する際に「納豆や過剰な緑黄色野菜は食べられない」「胃の内視鏡検査の前は薬を1週間程度休む」などの制限がありました。最近は使いやすい薬が登場し、選択肢が広がっています。
一方、根治を目指す「心筋焼灯[しょうやく]術(カテーテルアブレーション)」は心房細動の原因である肺静脈からの興奮をブロックする治療法です。器具の開発が進み、「冷凍バルーンアブレーション」「ホットバルーンアブレーション」などが保険適用になりました。いずれも不整脈が長く続かない早期の「発作性」が治療対象です。
突然死を招く心室細動
一方、最も危険な不整脈「心室細動」は、心室がけいれんして血液を送り出せなくなった状態で突然死につながります。心筋梗塞や心筋症で心臓の細胞が死滅したり、変性したりすることが原因となって発症します。心電図検査で異常が見つかった場合は「植え込み型除細動器」を取り付けることで危険を回避することができます。
健康な人でも、1日に何度か脈が飛ぶことはあります。「期外収縮」と呼ばれる不整脈で大半は心配いりません。ただし、自己判断するのは危険です。定期的に健康診断を受けて、心電図検査をすることが大切です。不整脈をチェックする家庭用血圧計もあります。日頃から脈を取る習慣を身につけましょう。