ふ化から商品化まで
一貫した生産体制
まだら模様がかわいいウズラ卵。1個8~11グラムと小さいが、鶏卵同様、栄養価にすぐれている。ウズラはキジ科の鳥。人との関わりは深く、戦国時代には鳴き声が「ゴキッチョー(ご吉兆)」と聞こえることから縁起を担ぎ観賞用として飼われていたと伝わる。飼育し採卵するようになったのは明治中期頃で、戦後全国に広まったとされる。
実はこのウズラ卵、高崎市の生産者が出荷していることをご存じだろうか。串田さんは、ウズラ卵を生産する県内唯一の養鶉家[ようじゅんか]だ。現在、創業の地である高崎農場のほか、赤城、倉渕と3つの農場を営む。約50万羽を飼育、1日35万個を産卵し、年間約13,000万個を出荷している。市販の約20%にあたり、全国2位の生産を誇る。卵は自社のパックセンターで洗浄、殺菌し、スタッフが一卵一卵、丁寧に割れや汚れを確認しながらパック詰めをし、出荷している。
安心・安全な卵
高校卒業後、就農。当時は父親が養鶏業の傍らウズラを飼っていたが、ウズラ卵の栄養価が高いことに着目し、1991年12月にウズラ専業として、新たなスタートを切った。当時、農場は市街地にあり臭い対策が大きなテーマだった。「特殊な脱臭装置の導入、餌や水など試行錯誤し、現在では臭いを大幅に削減することができました」と、串田さんは安堵の表情を見せた。
主原料のトウモロコシに納豆菌や酵母菌、海洋土、魚粉などが入った高タンパクの餌とこだわりの水を工夫したことで、おいしい良質な卵の生産にもつながった。
万が一、鳥インフルエンザが発生したことを考え、3農場で展開することでリスクを分散させている。また、ひなを徹底した衛生管理と温度管理のもと、成鳥に育成し、一斉に入れ替えるオールイン・オールアウト方式を採用している。「リスク管理は養鶏で学んだ経験が役に立っています」
衛生的に飼育された健康なウズラは、ふ化から商品化まで一貫した生産体制を確立している。
幸せの「たまごづくり」
串田さんのモットーは、幸せの「たまごづくり」だ。ウズラを通し消費者や取引先、従業員から喜ばれる存在を目指している。「イベントなどで試食をしてもらいますがおいしい、いつも食ベていますという言葉を聞くとうれしく、人とのつながりに支えられている」と感謝の思いを口にする。
昨年からは食品加工業で衛生管理を学んできた長男の雄俊[たけとし]さん(24)も戦力に加わり、「生産全国1位、6次産業化を目指しウズラ卵の魅力をもっと発信したい」と夢は膨らむ。
最後に一番おいしい食べ方を聞くと“卵かけごはん”と教えてくれた。「黄身が甘く感じるのでぜひ生で味わって」と笑顔で話してくれた。