ミュージカルを通して、多様な価値観を認め合う社会の実現を目指すNPO法人コモンビート(東京都世田谷区)で演出を担当している。古里の活性化につなげようと初の群馬公演を企画。29、30の両日、前橋で上演する。多様性を尊重する社会づくりが求められているー方、差別や偏見をあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)が問題となっている現在、海外でさまさまな文化に触れて感じた経験を生かして相互理解の大切さを舞台で表現する。
代謝を高めて
舞台を駆け巡る
年齢の垣根なく
出演者が手作りした舞台衣装をチェックし、アドバイスする新井さん(中央)
―コモンビートが全国各地で上演しているミュージカル「A COMMON BEAT」は架空の赤、緑、黄、青の大陸に住む人々が異なる文化に戸惑い、衝突しながらも互いに理解することによって、平和な世界を築くというストーリー。演技未経験者らが100日間で作り上げる舞台だ。公募で集まった約90人の出演者やスタッフは10~50代の幅広い年齢で、職業も異なる多様な顔ぶれ。新井さんは出演者ー人一人のレベルをチェックしながら、演出家として歌と踊りを指導している。
出演者とスタッフ同士に上下関係がないので、家庭や職場とは異なる感覚で、年齢の離れたメンバー同士交流を楽しんでいます。前橋在住のカメルーン人も1人参加しています。いろいろな人が集まって一つのことをやり遂げるのは大変ですが、やりがいを感じてもらえる場だと思っています。
海外で武者修行
ドイツの老人ホームで利用者との交流イベントに参加した
新井さん(左から4人目)と多国籍メンバー
―大学では日本の文化を海外からの視点で見つめ直し、英語で発信することを学んだ。高校生の時から続けてきた演劇活動を卒業後の進路に選び、コモンビートに参加。「A COMMON BEAT」を制作した米国の教育NPO「Up with People」の国際教育プログラムに2014年、半年間参加した。世界各国にホームステイして、ボランティアやパフォーマンスショーを公演した。
海外で武者修行しようとミュージカルに参加しました。ヨーロッパ各国や米国、イスラエルなどで公演して、さまざまな文化に触れられたのは大きな収穫でした。大学で学んでいたとはいえ、英語でコミュニケーションをとることはとても難しいことでしたが、表情や身振りなど演技でも大切な言葉以外の表現が役立ちました。
本場で味わったタイ料理。香辛料たっぷりの料理で汗をかいて代謝を高める
―コモンビートが台湾やタイで行なっている海外でのプログラムにも携わり、開催を予定しているフィリピンでの交流プログラムの準備も進めている。現在住んでいる横浜から通って群馬公演の演技指導をしている。国内外を行き来する忙しい日々を送る新井さんの活力の元になっているのは、欠かせない日課と訪問先の東南アジア各国で味わった料理だ。
朝のストレッチを日課にしています。やはり一日の始まりに体をほぐすと、体のキレが違います。汗をかいて代謝を上げることも大切にしています。しっかり時間をかけて入浴して、寝る時は腹巻と靴下をはいて血行をよくしています。香辛料をふんだんに使っている料理も好きで、タイ料理は日本でもよく食べています。
故郷で20代の集大成
一群馬公演は地元に活気を呼び込もうと、初めて企画した。群馬名物のだるまをモチーフにして、困難があっても前向きに頑張る気持ちを込めて出演者とスタッフが着る「七転八起」Tシャツを制作した。新井さんもひたむきに努力する出演者から刺激を受けている。
故郷のために何かしたいと思って企画しました。未来へ向かって頑張る10代、同世代の20~30代、人生の先輩である40~50代。一人一人との出会いに感謝しています。今まで学んできたことや取り組んできたことを表現できることは幸せです。私自身の20代の集大成として故郷での公演を成功させたいと思っています。
交流を通して世代間の理解を深める出演者とスタッフ