ハウス栽培に全力
欠かせぬ人工授粉
ハウス栽培においては、県内有数のズッキーニの産地、安中市。生産農家は20軒を数え、栽培面積は露地と合わせて4ha、年間の出荷量(2015年)は約23tに上り、年々増加している。
生産者の1人、奥原さんはご主人の賢一さん(66)とともに、6年前からズッキーニの栽培を始めた。家業として三十数年間、賢一さんが手掛けてきた養豚を廃業したのを機に、野菜栽培に転換した。
「苗が成長して実を付けるまで、いろいろと苦労はありますが、収穫の喜びは疲れを吹き飛ばしてくれます」
収穫作業は慎重に
大きなハウス内には、40~50cmほどに育った100株のズッキーニが、3列に整然と並んでいる。苗の定植から3カ月たち、収穫作業はピークを迎えた。
奥原さんは手袋をした手にはさみを持ち、大きな葉をよけながら濃緑色の細長い実を、一つ一つ慎重に切り取っていく。皮が軟らかく傷付きやすい。「少しでも傷が付くと、B級品になってしまうので、神経を使います」。長さが17~20cmで、見た目はキュウリにそっくり。JA碓氷安中が推奨しているラベンという品種だ。
ハウスに隣接する露地栽培の畑には、ゴールディという品種30株も花を付け始めた。直径6~7cmほどの卵形の黄色い実を付けるという。「もちろん出荷もしますが、花粉を採取するというもう一つの目的もあります」と奥原さん。実は雌雄異花のズッキーニは、人工的に授粉しないと正常な果実ができないのだという。
高品質を心掛ける
授粉作業は奥原さんの早朝の日課になっている。朝開いた花は、午前9時ごろにはしぼんでしまう。雄花を採取し、その日に咲いた雌花すべてに授粉を施す。続いて収穫作業を行い、大きさによってS、M、Lの3種類に分けて箱詰めし、JAに出荷する。
ズッキーニは高さ1mくらいまで成長しながら、1株で30~40個の実を付ける。「収穫作業は6月末まで続きます」と奥原さん。この間、施肥や水やり、ハウス内の温度管理などが欠かせない。害虫のアブラムシやウドンコ病対策などと合わせて、難しい作業は賢一さんに任せている。
ズッキーニが終わればゴーヤー、続いてブロッコリー、プチベール、下仁田ネギの栽培へと移っていく。「1年を通して切れ目なく収穫できるよう栽培品目を考えました」と賢一さん。ブランド化を目指している地元のためにも、常に高品質の作物出荷を心掛けている。