香り強くやわらか
ブランド化を推進
利根川と広瀬川の合流地点から北に200mほどの田園地帯に広がるゴボウ畑。収穫期を迎え、青々とした大きな葉が辺り一面を覆っている。葉は直径が50cm、茎の長さは80cm~1mもある。
葉や茎を刈り取って土がむき出しになった場所を、田部井さん運転のハーベスター(収穫機)が、地中深く延びたゴボウを引き抜きながらゆっくりと前進していく。
「手作業で収穫していた時代に比べれば、ずいぶん楽になりました」と田部井さん。地表に次々と姿を現したゴボウは、長さが1m以上ある。それらをパート従業員が泥の付いたまま軽トラックに載せ、選別機のある作業小屋へ運ぶ。
糖度は16度以上に
田部井さんが栽培しているのは、伊勢崎産のオリジナルブランド「京香」が中心。伊勢崎 市「農&食」戦略会議のゴボウ部会が、糖度16度以上の甘みを品質基準として3年前から生産を始めた夏ゴボウで、香りが強くやわらかで、ゴボウらしい風味を堪能できるのが特長。
ゴボウ部会長を務める田部井さんは、知名度アップと消費拡大に向けて、率先して栽培に取り組む。作付面積は2haで、「京香」に加えて、糖度がさらに高いもう一つのオリジナルブランド「甘久郎」なども手掛けている。
夏ゴボウの「京香」は、前年の10月に種をまき6~7月に収穫。秋ゴボウの「甘久郎」は、 4月に種まきして10月ごろ収穫を迎える。「連作障害を避けてネギ、ホウレンソウ、大根を計画的に作付けする輪作を行っています」と田部井さん。ネギの定植や草刈りなどの作業と重なり、当分は忙しい日々が続く。
栽培に適した土壌
「品質向上や収量アップなど目的を持って取り組めば、とてもやりがいがあります」。大学を卒業後、農業後継者として家業を継いだ田部井さんは、その理由をこう語る。かつては養蚕農家だったが、父親がいち早く野菜の栽培に転換した。「この辺りは川が運んできた沖積土のおかげで水はけがよく、ゴボウ栽培にはとても適しています」
就農から30年になるが「農業は天候などさまざまな要因に左右されやすく、何年やっても1年生です」と謙虚だ。しかし、探求心は旺盛で、自分で肥料用の草を栽培するなど、土作りに独自の工夫を凝らしている。
収穫した自慢のゴボウは、選別機にかけた後、袋詰めして群馬中央青果などに出荷している。7月20日まで部会主催の「ごぼ天フェア」を開催中。「市内の直売所や飲食店などで、新鮮なゴボウを使った天ぶらやキンピラ、パスタなどが食べられます。ぜひ味わってみてください」と田部井さんは笑顔で話した。