夏は高温多湿の環境を好むウイルスや細菌による感染症が流行します。「たかが夏風邪」と過信していませんか? 乳幼児の死亡原因の上位は不慮の事故ですが、感染症が原因で命を落とす子供もゼロではありません。伊勢崎市連取本町の伊勢崎市民病院副院長で小児科部長の前田昇三さんは「きょうだいで同じ感染症にかかっても、乳児や小さい子供は重症化しやすい傾向があります」と注意を促します。
感染症から
乳幼児の命を守る
暑い季節にはやる感染症
近年、冬場に多かったRSウイルス感染症が7、8月にもはやる傾向にあります。2歳までに感染するといわれる疾患で、初めて発症した時は症状が重く、特に生後6カ月未満の乳児は注意が必要です。特徴は鼻水、せきと噛鳴。「鼻水でおっばいが飲めない」「抱いていないと眠れない」といった状態から急に高熱が出て、ゼイゼイして呼吸困難に陥る危険があります。
定期予防接種の一つ、百日ぜきもワクチン接種前(生後3カ月未満)の乳児がうつると呼吸停止につながりかねません。長引くせきには注意しましよう。
夏風邪に多い熱性けいれん
三大夏風邪で知られるのがへルパンギーナ、手足口病とプール熱(昭頭結膜炎)です。ウイルスによる感染症なので、特別な治療薬はありません。脱水に気を付けて安静にしていれば治る疾患です。ただし、重症化すると脳炎や心筋炎を発症することがあります。①熱が下がった後、再び上がる②熱が出た後、せきが増える一などの症状に注意してください。
夏風邪に多い熱性けいれんは、熱の上がり際に出やすい症状です。最初は驚いてすぐに救急車を呼ぶ保護者もいるようですが、両手、両足が同じようにけいれんする左右差が無い状態で、5分以内に治まればあまり心配要りません。平らなところに寝かせ、吐いた物が喉に詰まらないよう顔を横に向けます。できれば、熱や持続時間を計っておくと診断に役立ちます。かかりつけ医を受診する際は、「(きょうだいが通園する)幼稚園や保育園ではやっている感染症」の情報を伝えると、溶連菌感染症や川崎病、RSウイルスなどとの鑑別の助けになります。
ワクチンの同時接種怖がらない
B型肝炎ワクチンが昨秋、定期接種になりました。予防接種の種類が増えて保護者の皆さんは苦労されていますが、日本は現在、世界の標準にやっと追い付いた状態です。「4種混合」などの同時接種を恐れず、かかりつけ医と相談しながら上手にスケジュールを立てましよう。
ロタウイルス胃腸炎は重症化しやすく、入院が必要となることの多い疾患です。髄膜炎や難聴につながる流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)と同様、任意接種のワクチンがあります。これらもできるだけ接種してほしいと思います。
生後1カ月健診でワクチン接種について学び、2カ月目から近所にかかりつけ医を持つよう、せひお願いします。