心の健康とヨーガ
~ストレス社会を上手に生きるために~
情報の氾濫・成果主義・スピード化…そんな現代社会で生きる私たちの心身は、知らないうちに消耗していることがあります。ゆっくり過ごす、休むということを忘れ、「活動と休息」「緊張と弛緩(リラックス)」といった本来のリズムを乱し、過活動・過緊張状態を持続させることが多くなりがちだからです。
活動のスイッチがオンのままになっているのは、たとえれば自動車が赤信号で停止中にもかかわらず空ぶかしをしている状態で、ブレーキとアクセルを同時に踏み続けているようなものです。それを長時間続けたら自動車は壊れてしまいます。同じように、人間でも過負荷を放置しすぎた結果、心身に何らかの症状が現れたり、病気との診断を受けることになっていきます。心の乱れが身体に現れる心身症やその他各種精神疾患などが増えており、厚生労働省や自治体では年間3万人近い自殺者対策を最重要課題として取り組んでいます。世界保健機構(WHO)でも、健康の概念を「肉体に病気がない状態だけを言うのではなく、精神的にも、社会的にも、宗教的にも完全に健やかな状態であること」と定義しています。
現代社会のめまぐるしさの中に生きつつも、緊張と弛緩(リラックス)すなわち自律神経系の働きを整え健康増進をするために、心も扱う「ヨーガ療法」はとても有効です。九州大学、熊本ルーテル大学、日本ヨーガ療法学会の共同調査では、2532人中、持病あり1433人(56.6%)、通院中1076人(42.5%)と、通院しながらヨーガの健康増進効果を求め、ヨーガ療法の教室に通っているという現状が明らかになりました。
ヨーガ療法(伝統的ヨーガを応用し心身の健康増進を図る技法)は、不調の有無や個性に合わせたやり方で、無意識の緊張を解き、リラックスや落ち着きを作り出します。そうして自分に気づいていくことで自己コントロール力や「今ここ」への集中力も養われていくため、医療・福祉・行政機関、依存症回復施設、アスリートのメンタルトレーニング、企業研修などの広い分野でも活用されています。
では、少し実習を紹介します。
自然呼吸の観察
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◆おなかの呼吸
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両手または片手を下腹部に当て、呼吸に合わせて動くおなかを感じとります(30秒~1分間)。
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◆胸の呼吸
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両手または片手を胸部に当て、呼吸に合わせて動く胸を感じとります(30秒~1分間)。
抵抗(アイソメトリック負荷)をかけ、心身の緊張を緩める体操
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◆座り疲れに「腰押し」(背中、胸)
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息を吸いながら、両手を骨盤に当て、
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吐く息「あー」の声とともに腰と手で押し合い、
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吸う息で力を抜き、
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吐く息「あー」の声とともに両手をゆっくり下ろし脱力を感じる。(①~④を1~3セット繰り返す)
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両手をおなかに当て、5~10呼吸の自然呼吸を感じながら休む。
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◆肩こりに「肘押し」(首から肩、肩甲骨周辺)
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息を吸いながら、曲げた左肘の外側を右手で持ち、
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吐く息「うー」の声とともに左肘のー外側と右手で押し合い、
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吸う息で力を抜き、
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吐く息「うー」の声とともに両手をゆっくり下ろし脱力を感じる。
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反対も同様に行う(①~⑤を1~3セット繰り返す)
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両手をおなかに当て、5~10呼吸の自然呼吸を感じながら休む。
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◆下半身のリフレッシュに「もも上げ押し」(もも前、腰回り、腕、胸)
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息を吸いながら、膝を曲げた左脚を上げもも前に両手(または片手)のひらを当て、
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吐く息「あー」の声とともに右ももと両手で押し合い、
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吸う息で力を抜き、
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吐く息「あー」の声とともに左脚・両手をゆっくり下ろし脱力を感じる。
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反対も同様に行う(①~⑤を1~3セット繰り返す)
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両手をおなかに当て、5~10呼吸の自然呼吸を感じながら休む。