執筆者略歴
たかはし・とうせい
東京農業大農学部栄養学科卒。
東京女子医科大大学院修了。特定給食施設の現場で管理栄養士業務を経験した後、国立がんセンター研究所、東京農業大短期大学部講師を経て聖徳大准教授。
2008年から現職。専門は公衆栄養学。医学博士。
元気な暮らしに役立つお話…高橋東生
桐生大学医療保健学部栄養学科教授
食事バランスで、
健康寿命を延ばそう
「何」を「どれだけ」食べる?
みなさんは「食事バランスガイド」をご存じですか。
2000(平成12)年3月に、当時の文部省・厚生省及び農林水産省が連携して、健康で豊かな食生活の実現を目的に「食生活指針」を策定しました。「食事バランスガイド」は、この食生活指針をより具体的行動に結びつけるために、2005年6月に厚生労働省と農林水産省が策定したものです。
1日に「何を」、「どれだけ」食べたらよいかを考える時に参考になるよう、食事の望ましい組み合わせとおおよその量をイラストでわかりやすく示したものです。諸外国も同様なガイドを作成していますが、原則的には食材量を対象とし、日本版は料理に着目している点が特徴です。
食事バランスガイドでは、毎日の食事を、主食/副菜/主菜/牛乳・乳製品/果物の5つに区分し、区分ごとに「つ(SV)」という単位を用います。
また、欠かすことのできない水・お茶、菓子・嗜好飲料、運動についてもイラストで表現しています。
さらに「コマが回転する」=「運動する」ことによって初めて安定することを表現しています。栄養バランスのよい食事をとること、適度な運動をすることは、健康づくりにとってとても大切なことです。適度な運動習慣を身につけましょう。
わが国は、主食として「米」を食べています。
しかしながら、わが国の主食である米の消費量(1人1年当たり)は、1960年代(118.3g)と比較して、2012年度(56.3g)では、半分以下となっています。
主食としてのバリエーションが広がり、必ずしも「米」=「ご飯」が食卓にあがることはないかもしれません。スパゲティなどのパスタやパン・うどん・そば・ラーメンなども主食として扱われますが、これらの原材料である小麦粉は海外からの輸入に頼らなければなりません。わが国の食糧需給の現状も鑑みて、こ飯の摂取量を増やしたいものです。
この食事バランスガイドが策定されてから10年以上が経過していますが、みなさんは上手に活用していますか。
食事バランスガイドの基になった「食生活指針」は、2016年6月に一部改正が行われました。
主食・主菜・副菜を基本に、食事のバランスを。
これを実践するために、以下の3項目が示されています。
実践するために
「多様な食品を組み合わせましょう。」
「調理方法が偏らないようにしましょう。」
「手作りと外食や加工食品・調理食品を上手に組み合わせましよう。」
食事の内容については、主食・主菜・副菜という料理の分類を基本とすることにより、多様な食品を組み合わせ、必要な栄養素をバランスよくとることができます。1日に主食・主菜・副菜がそろう食事が2食以上の場合、それ以下と比べて、栄養素摂取量が適正となることが報告されています。
2017年3月に内閣府より報告された「食育に関する意識調査報告書」では、現在、1日に主食・主菜・副菜を3つそろえて食べることが1日に2回以上あるのは、週に何日あるか聞いたところ、「ほぼ毎日」とした人が59.7%、「週に4~5日」が17.3%、「週に2~3日」が16.4%、「ほとんどない」が6.2%となっています。
栄養バランスに配慮した食生活について、世代間別に見ると、若い世代(20~39歳)では、「ほぼ毎日」と回答した人の割合は約4割にとどまっており、約1割が「ほとんどない」と回答しました。
性別に見ると、「ほぼ毎日」と回答した人の割合は女性で高いが、女性の20歳代だけはその割合が約3割と極端に低く、「ほとんどない」と回答した人の割合が約2割と高い。また、男性の20歳代、40歳代でも「ほとんどない」と回答した人が多いという結果でした。
さらに、主食・主菜・副菜を3つそろえて食べる回数を増やすために必要なことを聞いたところ、「時間があること」が51.1%、「手間がかからないこと」が48.1%と高く、以下、「食費に余裕があること」(30.1%)、「自分で用意することができること」(29.8%)の順になっています。
食品に含まれる栄養素の種類と量は、個々の食品ごとに異なります。どのような食品であっても、ただ1つの食品ですべての栄養素を必要なだけ含んでいるものはありません。特定の食品や特定の成分を強化した食品に依存することなく、主食・主菜・副菜といった栄養面の特徴を異にする料理の組み合わせを基本に食事をすることが望まれます。
また、調理方法も大切です。食事の楽しさを増すためにも、エネルギーや脂肪、食塩の過剰摂取を避けるためにも、調理方法が偏らないようにしましよう。炊め物や揚げ物などは油を多く使いますし、煮物や汁物などは塩分が多くなりがちです。
さらに、近年、外食の機会や加工食品・調理食品を利用する機会が増加していますが、主食・主菜・副菜を基本に、多様な食品の組み合わせを考えるとともに、手作りとの上手な組み合わせを工夫することも、食事のバランスを保つことに役立ちます。
健康日本21
わが国の健康増進事業として、2003年の健康増進法に基づき「健康日本21」が策定されました。「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」は、国民の健康の増進の推進に関する基本的な方向や国民の健康の増進の目標に関する事項などを定めたものです。この方針が2012年7月に全面的に改正されて、いわゆる「健康日本21(第2次)」が策定されました。
健康日本21では、「量・質ともに、きちんとした食事をする人の増加」として、成人について「1日最低1食、きちんとした食事を、家族ら2人以上で楽しく、30分以上かけてとる人の割合」が目標項目にあげられました。その最終評価ではB(目標値に達していないが、改善傾向にある)となっています。
健康日本21(第2次)では、生活習慣病予防に焦点をあて、食事内容についての指標をとりあげ、「主食・主菜・副菜を組み合わせた食事が1日2回以上の日がほぼ毎日の者の割合」が指標となりました。
みなさんも、食事バランスガイドを参考にして、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事で、健康寿命を延ばしましよう。