白内障治療最前線

精度高いレーザー切開 多焦点眼内レンズで得られる 裸眼での生活

目の中でレンズの役割をする水晶体が濁ってしまうことにより視力低下に陥る白内障。症状改善には レンズを交換するように眼内レンズと呼ばれる人工のレンズを挿入する手術しかない。レンズの種類や 術式の進歩は目覚ましく、白内障に悩む人にとって快適でスムース、満足度の高い治療が始まっている。

最先端の白内障手術システムが導入されただるま眼科。 手術の様子を見学することもできる

手元と遠距離にピント

「患者さんには納得した白内障治療を受けてほしい」と話すだるま眼科の田邉院長

 白内障の原因は加齢によるもので、60歳代で約7割、80歳代ではほぼ全員がかかるとされている。白内障は痛みを伴わず、更に自覚症状がわかりにくため、眼科への受診が遅れる傾向にある。夜間、車のへッドライトがまぶしく感じたり、霧がかかったような見え方を感じたら、早めに眼科医に相談されることをおすすめしたい。白内障の原因は目の中でレンズの役割をする水晶体の濁りである。白内障の治療には、濁った水晶体を取り除き、眼内レンズを挿入する“水晶体再建術”が必要になり、国内で年間約150万件行われている。濁った水晶体を取り除き、眼内レンズを挿入する“水晶体再建術"は国内で年間約150万件行われている。そのうち98%は、保険診療による単焦点眼内レンズを使用したもの。費用は抑えられるが、術後に裸眼でピントが合わない距離を見たい場合、眼鏡が必要となる。

眼内レンズについては、術後に眼鏡をかけたくない人のために開発された多焦点眼内レンズの使用が徐々に広まりつつある。遠距離(5メートル以上、運転や運動などの距離)と近距離(30~40センチ、スマホや読書などの距離)の2カ所にピントが合う2焦点のほか、最新のものではパソコンや台所の手元など中距離(50センチ~1メートル)にもピントが合う3焦点のレンズも海外で出てきている。

短時間で精密な切開

手術においても、全ての工程を術者の手で行っていたマニュアル手術からレーザーを使った手術が始まっている。高崎市飯塚町のだるま眼科(田邉祐資院長、027・381・8915)は今年7月、最先端の白内障手術システムを導入した。システムの中には、フェムトセカンドレーザーと呼ばれる1000兆分の1秒のレーザーを照射することでメスを使わずに正確、精密な切開を短時間に安全に行うことができる装置がある。国内での導入はまだまだ進んでいないが、眼内レンズに適した大きさ、位置で正円に切開できるため、高度な精度が要求される多焦点眼内レンズとの相性が良い。

データ活用し最適レンズ選択

難易度の高い手術を最先端のシステムがサポート

同システムには、術後の良好な屈折状態(遠方に焦点を合わせる、近方に焦点を合わせる、乱視を軽くする)を得るために、“患者さんの目の状態”と“術者の手術の傾向”を数値化した上で分析し、組み合わせることで良好な裸眼視力を得るための手術計画を立て、その情報を手術中にデジタルでガイドする援助装置もある。さらに術中の目の屈折変化に対応し、術中でも世界中の登録された眼科医のデータと照合することで患者さんに適合した眼内レンズを選択できる装置もあり、術後よりよい結果が得られるようになる。

先進医療は保険検診適用外

単焦点眼内レンズでマニュアル手術を受ける場合は保険診療となり費用を低くおさえられる。多焦点眼内レンズの使用やレーザーを使用した手術などの先進医療は、厚生労働省から承認された施設で受けられる。先進医療の費用は通常の治療と共通する部分(診察、検査、投薬など)は保険診療だが、先進医療に関する技術については自由診療となる。同医院では2焦点眼内レンズでレーザー白内障手術を受ける場合は先進医療特約の適用となる。3焦点眼内レンズは、国内では未承認のため保険診療も先進医療も適用にならないため全て自己負担の自由診療となる。

だるま眼科は情報公開を大切にしている。密室で行われるというイメージがある手術を、希望する場合ご家族等にみてもらうため手術室をガラス張りにして見学することも可能である。

田邉院長は「白内障手術は片目につき一生に1回しか受けられません。眼内レンズや手術方法について選択肢があることを説明しています。眼内レンズでも単焦点、多焦点ともにメリット、デメリットがあります。患者さんは医師からの説明を聞いた上で十分に内容を理解し納得した上で手術を受けてほしい」と話す。

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