元気流儀インタビュー

今年、県内の女性で11人目となる剣道七段に昇段した島田郁子さん。剣道は高校入学と同時に始め、卒業後も地元の松井田町にある百合若道場で約40年間、忙しい日々の中でも時間をつくって竹刀を振るい、技と精神を磨いてきた。七段昇段に挑戦していた中、頸椎[けいつい]椎間板ヘルニアを発症。治療を受けながらも諦めずに審査を受け続け、今年5月の14度目審査でついに昇段した。


病気をばねに 心身鍛える

長年の鍛錬で精神的にも強くなれたと話す島田さん

社会人も道場へ

―高校入学の時、流行していたテレビドラマに憧れて始めた剣道。すぐに面白さを感じて稽古に打ち込んだ。2年生からは主将としてチームをまとめ、県高校対抗選手権の団体で準優勝を果たした。卒業後は働きながら、地元の百合若道場で腕を磨き、国内トップクラスの大会である全日本都道府県対抗女子優勝大会の前身、全国家庭婦人大会に4度出場した。

高校では先輩が優しく剣道を教えてくれたので、できなかったことも一つ一つ乗り越えてできるようになりました。新しいことを覚えられるのが新鮮で、女子の仲間がたくさんいたのも楽しかったです。道場の稽古は夜なので、仕事や家事と両立でき、長く続けることができました。

竹刀を振るうことで肩と腕が鍛えられるので、私は肩凝りで悩むことはあまりありませんでした。社会人にお勧めできる運動だと思います。若い時に学校の部活動などでやっていても就職や結婚、子育てで忙しくなって離れてしまう人もいますが、剣道は年齢に関係なく楽しめるので、もう一度、道場に足を運んでもらいたいです。

痛みに負けない

―2011年に長年の念願だった七段への昇段審査に初めて挑戦した。実技と形の2段階を審査されるが、なかなか実技の壁を突破できなかった。諦めずに挑み続けていた12年秋、鎖骨から肩にかけて痛みが走った。頸椎椎間板ヘルニアだった。頸椎の間にある椎間板の内部の髄核が飛び出して神経を圧迫する病気で首や肩、腕に痛みやしびれなどを引き起こす。島田さんはひじから指にかけてしびれを感じるようになり、整形外科を受診した。痛みが治まるまで療養したが、稽古と昇段審査への挑戦は休まず続けた。

稽古中は気が張っているせいか不思議と痛みを感じなかったのですが、日常生活では、じっとしているだけでも痛みを感じるほどでした。この痛みに負けたくない思いがばねとなり、剣道に打ち込むことができました。今は疲れがたまってへルニアが悪化しないように週に一度、かかりつけの接骨院で体のメンテナンスをしています。自分でできる健康づくりとして、食事に気を付けています。朝起きた時はコップ1杯の水を飲んで腸の動きを整えます。納豆などの発酵食品や近所の農家が作った季節の野菜をサラダにして食べることで、体の調子を整えています。

もっと成長を

道場で小さな剣士を指導する島田さん。 ただ試合に勝つことだけでなく、礼儀や精神面といった基礎の大切さも教える

―今年5月に愛知県で行われた審査に合格。14度目の審査だった。受審者数960人のうち、合格者182人のほとんどは男性だった。

女性の受審者はまだまだ少ないですが、道場では多くの女性が稽古しています。これからはもっと女性の受審者が増えると感じています。昇段審査の際、県剣道連盟副会長で八段の池田伊一さんや道場主の茂木右源太さんの指導のほか、すでに七段になっていた県連盟女子部の先輩の助言が支えとなりました。これから上を目指す後輩のために私も役に立つていきたいです。

―道場では週3回稽古している。学生や初心者向けの稽古では、これまでの経験を生かして指導し、ベテランや段位の高い上級者との稽古では、体格も体力も異なる男性とも竹刀を交える。

剣道は心と体が鍛えられるところが魅力だと感じています。修行に終わりはありませんが、長く続けたことで我慢強くなれたと感じています。昇段したことで責任を実感しています。体力や体格に差があったとしても七段として、高いレベルで相手に対峙しなくてはなりません。より厳しい世界に身を置くことで、自分自身もこれからもっと成長できるのではないかと思っています。

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