過去に血糖値が高いと指摘されたことはありませんか? 日本人の6人に1人が糖尿病、または糖尿病予備軍といわれています。進行するまで自覚症状は出ませんが、悪化するとさまざまな合併症を発症します。最近は認知症やがん、骨粗しょう症のリスクが高くなることも分かってきました。前橋市上新田町の済生会前橋病院、内分泌糖尿病内科代表部長の荻原貴之さんは「合併症を防ぐには糖尿病の早期治療が肝心。しかし、健康診断で糖尿病が疑われても医療機関を受診しない人が多く、特に若い男性では未治療がおよそ半数を占めます」と警鐘を鳴らします。
糖尿病治療
待った無し!
がんや認知症の危険因子に
食事をすると血液中のブドウ糖の量が増えて血糖値が上がりますが、すい臓で作られるホルモンの一つ、インスリンの働きによって筋肉や脂肪などでブドウ糖が代謝されるため血糖値は元に戻ります。
糖尿病は、持続的に血糖値が高い状態です。血管がダメージを受けて動脈硬化が進み、さまざまな合併症を引き起こします。細い血管に影響が及ぶと三大合併症で知られる糖尿病の「網膜症、腎症、神経障害」を発症し、進行するとそれぞれ「失明、人工透析、下肢切断」につながります。
また、脳梗塞や心筋梗塞、歯周病の悪化、大腸・肝臓・すい臓のがん、血管性やアルツハイマー型の認知症、骨粗しょう症などの発症リスクも高まります。さらに、治療中に低血糖症を繰り返すことで認知症が悪化することも分かっています。
糖を消費する筋肉増やそう
日本人の糖尿病のおよそ9割は食べ過ぎ、運動不足、肥満を基礎としたインスリン不足や機能低下が原因の2型糖尿病です。改善には食事の見直しと運動から始めましょう。
食事の量は、標準体重と生活活動強度を基準に、年齢や肥満度などを考慮して一日に必要な摂取カロリーを算出します。食べ方も工夫し、①食べる順番を意識して食物繊維を多く含む食品を先に食べる②満腹感を得られやすくカロリーの低い食品を選ぶ③薄味にする―などを心掛けてください。
運動はウオーキングなどの有酸素運動を1回20分程度を目安に1日1~3回、血糖値が上がる食後に行います。また、テレビを見ながらスクワットやダンベル体操をしたり、足上げ運動などのレジスタンス運動(筋肉トレーニング)を取り入れて、ブドウ糖を消費する筋肉を増やしましょう。「薬を飲んでいるから大丈夫」と思いがちですが、それだけで血糖値をコントロールすることはできません。生活習慣を改善することが何よりも大切です。
治療の中断を防ぐ薬を選ぶ
薬物療法は大きく分けて内服薬とインスリンなどの注射薬があります。作用する時間やその働きなどにより種類も複数あります。心筋梗塞など大血管障害の合併症を防ぐには、肥満症、脂質異常症、高血圧症なども併せて治療する必要があります。治療の中断は糖尿病を悪化させるので要注意。例えば「薬の飲み忘れが多い」という人は、種類によって週1回投与の薬もあるので主治医に相談してください。
血糖値が高い状態が長く続くと合併症を発症するリスクが高まります。健康診断で異常を指摘されたら、迷わず医療機関を受診してください。