慢性的な頭痛に悩む“頭痛持ち”の人は国内に約4000万人いると推定され、そのうち約840万人は片頭痛の患者です。若い女性に多く、ひどい人は寝込んでしまったり、仕事や勉強が手につかなかったりします。鎮痛薬が手放せなくなり、飲み過ぎによる頭痛が重なっている人も少なくありません。高崎市倉賀野町、みずの神経内科・内科クリニック院長の水野裕司さんは「自己判断で市販薬を乱用せず、的確な診断と治療でつらい症状を取りましょう」と助言します。
片頭痛、薬で治る?
治らない?
若い女性に多い
片頭痛が起こる頻度には個人差があります。多くの人は月1、2回程度ですが、年2、3回だったり、週に数回繰り返す人もいます。持続時間は4~72時間。主な症状は①頭の片側が痛む②ズキンズキンと脈打つように痛む③仕事、家事、勉強が大変になり寝込むこともある④歩行時など頭を動かすと痛みがひどくなる⑤ムカムカしたり吐いてしまう⑥テレビの音や子供の声が響く⑦光をまぶしく感じる─などです。男性よりも女性に多く、10~20歳代で発症しやすいのも特徴です。
頭痛を誘発する要因はさまざまです。月経、ストレス、人混み、寝不足・寝過ぎ、食べ物(チーズやチョコレートなど)、飲酒(赤ワインが有名)、気圧の変化などがあり、大半は避けられません。
薬の効果は個人差
頭が痛いとき、多くの人は痛み止めを飲むと思います。しかし、市販の頭痛薬や炎症を抑える鎮痛剤が効かない場合は、片頭痛専用の薬を使って治療します。炎症を抑えるだけでなく、片頭痛の根本的な原因をピンポイントで抑える薬です。現在使えるのは5種類。飲み薬だけでなく点鼻薬と皮下注射があり、吐き気がある場合に有効です。ただし効果には個人差があるため「どの薬が合うか」を試しながら時間をかけて治療を進めていきます。症状が重くて寝込んでしまう人や週に何度も繰り返す人には、片頭痛の頻度を減らしたり程度を軽くする予防薬を使うことも検討します。主に4種類あり、大半の人は毎日服薬すると2、3週間後に効果が出ます。
鎮痛薬乱用で痛み
注意したいのが市販薬や鎮痛剤の乱用です。脳が痛みに対して敏感になったり、痛みを抑える脳の働きが低下して新たな痛みが加わることがあります。「薬物乱用頭痛」で、月に10日以上薬を飲んでいると疑いが強くなります。この場合も予防薬を使って治療します。
片頭痛は加齢とともに軽くなる人もいれば、ずっと続く人もいます。「たかが頭痛では」と学校や職場で理解してもらえず、つらい思いをしている人はいませんか。「試験など大事なイベントの時に痛くなったらどうしよう」と不安な人もいるでしょう。患者の約70%は医療機関を受診しておらず、約50%は市販薬のみに頼っているのが現状です。寝込んでしまうほどの片頭痛は立派な病気です。命を脅かす疾患ではありませんが、別の病気が隠れていないかどうか調べることも大切です。頭痛により生活に大きな支障が出る人こそ、専門の医師による正確な診断、そして個々に適した治療が必要です。我慢せずに一度、医療機関で相談してください。