この季節、おでんやすき焼きなどの鍋物や煮物、田楽など私たちの食卓に度々登場するコンニャク。独特の歯ごたえは他の食品ではなかなか得られません。また今日では、伝統的な食品としてだけではなく、健康食品としても取り上げられることが増えてきています。ここではコンニャクの原料、製造や成分について紹介します。
執筆者略歴
くまくら・けい
高崎健康福祉大学健康福祉学部健康栄養学科助教
専門は食品学、博士(農学)
東京農業大学応用生物科学部バイオサイエンス学科卒
東京農業大学大学院農学研究科博士前期課程修了
東京大学大学院農学生命科学研究科博士後期課程修了
2010年より高崎健康福祉大学助手、2015年より現職。
製造方法
コンニャクの製造は、大きく分けて生芋から製造する方法とコンニャク粉と呼ばれる精粉から作る方法があります。精粉は、生芋を薄くスライスし、乾燥させた「荒粉」を臼で引き、芋の皮やでんぷんからなる「とび粉」を取り除き、精製し、粉状にしたものです。製造の基本は、はじめに、コンニャク芋に含まれる成分であるグルコマンナンを水で膨張させ、のり状にします。そこに消石灰(水酸化カルシウム)などのアルカリを加え、ゲル状にしたものを加熱します。そうすることで加工食品としてのコンニャクが出来上がります。一般的に東日本では軟らかいものが好まれ、西日本では硬めの歯ごたえのしっかりとしたものが好まれるといわれています。以下にさまざまなコンニャクを紹介します(表1)。
板コンニャク
板状に成形したコンニャク。生芋から作るものと精粉から作るものがあります。精粉から作るものは、色が白いものと黒いものがあります。色の黒いものは、ひじきなどの海藻を混ぜて作られています。海藻を入れるのは、生芋から作ったコンニャクが、皮を含んでいたことや凝固剤として使用した木灰の灰汁の影響で黒かったことを模したものといわれています。
しらたき
精粉に水を加えて糊化[こか]後、アルカリを添加したものを細い穴を通して、お湯の中に細長く、紐状に絞り出して成形したものです。おでんや肉じゃが、すき焼きなどに使用します。
凍みコンニャク
薄くスライスしたコンニャクを凍らせて乾燥させたものです。水かけと凍結を20日程度繰り返し、乾燥させて作られます。保存食としても利用されています。食する時は水で戻し、煮物などに使います。
赤コンニャク
赤色のコンニャク。滋賀県の近江八幡地方の特産品として知られています。このコンニャクの誕生は、当時、その地を治めていた織田信長に由来するという説があります。赤色はベンガラ(三二酸化鉄)を加えて発色させているため、板コンニャクなどに比べて、鉄の含有量が高いのが特徴です。日本食品標準成分表2015年版(7訂)によると、鉄の含有量は可食部100g当たり、精粉からつくられた板コンニャクでは0.4mgなのに対して、赤コンニャクでは、78.5mgとなります(表2)。
米粒状コンニャク
コンニャクを米のような形状に加工した食品。米と混ぜて使用することでエネルギー摂取の調整などに使われます。
コンニャクゼリー
精粉にガラギーナンやキサンタンガムなどの増粘多糖を加えて作られたものです。精粉の成分であるグルコマンナンはこれらの多糖と共に用いることで弾力に富む独特の食感が得られることがわかっています。
そのほか、一口大に丸めて成形した玉コンニャク、板コンニャクを突き出して、細長い形状にした突きコンニャクなど。また、刺身コンニャクと呼ばれ、コンニャクを薄切りにして、酢みそなどをつけて食べるものもあります。