20歳で父の跡継ぐ
機械化で大規模に
コンニャク栽培 |
昭和村 |
稲垣 貴謙[たかのり]さん(44) |
コンニャク芋の生産量が全国1位の本県は、9割のシェアを誇っている。赤城山北麓に位置する昭和村は、県内主要産地の一つで、コンニャク栽培に適した水はけのいい火山灰土が広がり、大規模経営の農家がたくさんある。
生産者の1人、稲垣さんも積極的に機械化を進め、栽培面積は14haに広がり、年間約483tを出荷している。
栽培品種は、県の育成品種である「みやままさり」。生子(きご)が球状なので機械による植え付けがしやすい─といった利点があり、3年前に導入した。「グルコマンナンの含有量が多く、歩留まりもいいので、生産者にとって魅力的な品種です」と稲垣さん。
▼コンニャク芋を選別機にかける稲垣さん(手前)と妻の陽子さん
収穫まで2~3年先
農家の長男に生まれた稲垣さんが、父親の跡を継ぐ形でコンニャクの世界に飛び込んだのは、県立農林大学校を卒業した20歳のときだった。
コンニャクは収穫までに2~3年かかる根気のいる作物だ。1年目は種芋作り。春に種芋の赤ちゃんである生子を植え、秋に掘り起こして貯蔵庫に保管。翌年の春にその種芋を植え、大きく芽を伸ばして地下茎に養分を蓄え、300g以上に育ったら収穫し販売する。300g未満の場合は、もう1年同じことを繰り返す。
稲垣さんは2年で出荷しているが、それでも「手間がかかって大変です」と苦笑する。農林大学校で知り合った妻の陽子さん(44)、3年前に同大学校を卒業した長男の裕太さん(23)や友人の助けを借りて、数々の作業をこなしている。
「種芋の植え付けや収穫のときは、パートを含め総勢15人ほどになります」
デリケートな作物
▲大きさをそろえ、乾燥防止をして貯蔵庫に保管する
栽培を始めて分かったことは、コンニャクが自然の影響を受けやすく、病害虫にも弱いデリケートな作物であるということだ。
「風で倒されると茎から菌が入ったり、大敵のアブラムシによって葉が萎縮する“えそ萎縮病”を発症したりして、芋が育たなくなってしまいます」と稲垣さん。定植前の予防防除や虫が発生しやすい夏場の消毒は欠かせない。「油断すると、畑の一区画が全滅ということになりかねません」
もう一つ神経を使っているのが、貯蔵庫の温度と湿度の管理だ。コンニャク芋は生子を含めて貯蔵期間が半年以上にわたり、その間の気配りが収穫時の品質の良しあしを左右する。「コンニャクひとつで生計を立てているので、1年を通して気を抜くことはできません」と専業農家としての気構えを披露。今後は同じ面積で収量アップにつなげる研究に取り組むという。