群馬のイチゴ「やよいひめ」の名前の由来をご存じですか。
「やよいひめ」は、群馬県で育成された「とねほっぺ」と「とちおとめ」を使って育成されました。サイズは平均20gと大粒で、中まで薄い赤色をしており、甘みが強く酸味はまろやかです。一般に、イチゴは気温が高くなる3月(弥生)ごろから品質が落ちやすいといわれていますが、「やよいひめ」は果肉がしっかりして日持ちが良く、高温期にも黒ずむことが無いこと、また、農耕文化が弥生時代に発祥したことにちなんで名づけられたそうです。
執筆者略歴
かさはら・よしこ
高知県立高知女子大学家政学科卒。徳島大学大学院修了。長年、管理栄養士・栄養士養成課程で教鞭をとる。桐生大学教授を経て2014年度から現職。専門は栄養教育。管理栄養士・保健学博士・日本コーチ協会メディカルコーチ。
栄養と働き
イチゴの約90%は水分ですが、栄養面での特徴は、大きく2つあります。
その一つは、イチゴには、ビタミンCが豊富に含まれていることです。日本人の食事摂取基準2015年版によれば、1日に必要なビタミンCの推奨量(ほとんどの人が1日に必要な必要量を満たすと推定される量)は成人男女とも100mgですが、イチゴを4粒食べると、半分の50mgをとることができます。平成28年の国民健康・栄養調査では、通常の食品から男性で平均87mg/日、女性で平均91mg/日を摂取しており、少し不足しています。イチゴだと簡単にビタミンCを補給できます。
このビタミンCは人の体内では合成されず、食物から摂取しなければならない栄養素の1つで、人体の免疫機能や鉄の吸収を高め、病気の予防や貧血予防、健康維持のために大切な役割を果たしています。
さらにもう一つ。それは低エネルギーであることです。イチゴ4粒で約25~30kcal。イチゴ1パック(約300g)食べても約100kcal。イチゴのジャムもおいしいですが、この低エネルギー食品としての良さを生かすためにも、砂糖を加えず、イチゴ本来の自然の甘みをお楽しみください。でも、食べ過ぎは禁物です!
注目すべき成分
アントシアニンやキシリトールという言葉を聞かれたことがありますか。近年、注目を浴びている成分です。
イチゴの赤い色素には、抗酸化物質として知られるアントシアニンが含まれています。アントシアニンは、紫外線やウイルスから身を守るために植物が作り出した、フィトケミカル(通常の身体機能維持には必要とされない植物由来の化合物で、第7の栄養素と呼ばれることがあります)です。ブルーベリーやブドウ、紫イモ、黒豆、ナス、シソなどにも含まれています。視覚機能を改善したり、内臓脂肪の蓄積を抑制して、メタボリックシンドロームを予防する効果があると言われています。また、ヒスタミンを減少させる働きがあるため、花粉症にも効果がありそうです。しかし、アントシアニンは、体内に吸収されると24時間以内に尿中に排せつされるので、イチゴをはじめ、身近な食べ物から、アントシアニンを毎日、積極的に取りましょう。
また、キシリトールは、イチゴやカリフラワー、ラズベリー、ホウレンソウ、タマネギ、ニンジン、レタスやバナナなどの野菜や果物に多く含まれています。キシリトールは、虫歯の原因となるミュータンス菌が分解することができないため、酸を全く作り出さないこと、さらに、ミュータンス菌の活動を弱める性質があることから、甘味料でありながら、非う蝕性であることが知られています。でも、イチゴを食べたら虫歯にならないということではありませんので、毎食後の歯磨きは忘れずに。
さらに、キシリトールは、砂糖と同程度の甘みがありますが、エネルギーは40%ほど低くなっているのが特徴です。
一方、現在は一般に食することはありませんが、イチゴの葉は、仙鶴草[せんかくそう]と呼ばれ、生薬(漢方)に用いられています。止血、健胃などの作用があるアグリモニインや抗酸化作用が高く、血液をサラサラにする働きのあるケルセチンなどの成分を含んでいます。ケルセチンは、玉ねぎにも含まれている成分として有名になりました。