県の品評会で金賞
高崎市街地から榛名方面へ向かう県道沿いに、完成間近のコテージ風のしゃれた建物が立っている。隣接する駐車場の奥には「金井いちご園」の仮設の直売所があり、早朝に摘み採ったばかりの新鮮なイチゴを求めて、顧客が次々と車でやって来る。
販売しているのは主に本県の育成品種「やよいひめ」。大きい粒と上品な鮮紅色が特長で、甘みと酸味のバランスがよく人気がある。「栽培に携わる者にとって、お客さんの『おいしい』の一言が一番の励みになります」と金井さん。近く完成する加工場付きの新たな直売所では、「イチゴを使った加工品の販売を充実させたい」と夢を広げる。
脱サラでチャレンジ
金井さんがイチゴ栽培に取り組み始めたのは12年前。IT関連の会社を辞めて就農した脱サラ組だ。兼業農家の長男に生まれたが、それまで農業には全く興味がなかった。
しかし、前橋でイチゴ農家を営む妻の実佳さん(39)の叔父に触発された。当時50歳だった彼のエネルギッシュに働く姿を見て、「自分もあんな50歳を迎えたいと思いました」と振り返る。叔父の元に弟子入りして、栽培から販売までイチゴ作りのあらゆるノウハウを吸収した。
栽培用のハウスは3棟あり、延べ面積は4000㎡を超える。昨年夏に完成した1棟は観光農園用のハウスで、他の2棟の栽培品種が「やよいひめ」一色なのに対して、「さちのか」「紅ほっぺ」「とちおとめ」など8品種を栽培している。
金井さんが作るイチゴのおいしさの秘密は、土作りにある。できる限り有機肥料を使い、土中の微生物を活性化。また、米ぬかを大量に投入して、発酵熱を利用することで、農薬の使用も極力抑えるように努めており、甘さや酸味にうまみも加えられるよう、独自に工夫を凝らしている。
環境制御システム導入
収穫は12月初めに始まり、6月半ばまで続く。その後は土作りと苗作りに専念し、育苗ハウスで3万5000本の苗を管理し、次のシーズンに備える。一年中休む間もないが、15人のパートの手を借りて乗り切っている。
特に栽培中は、外気温に左右されず安定した収穫ができるように、最先端技術の環境制御システムを導入。ハウス内の温度や湿度、光合成のための二酸化炭素濃度を数値化して調整しており、省力化にも役立っている。
こうした努力が実り、今年の県いちご品評会・県育成品種の部で「やよいひめ」が金賞(知事賞)を受賞し、その他品種の部でも「さちのか」が金賞に輝いた。今年オープンした観光農園ハウスのイチゴ狩りで、それらをたっぷり味わえる。