がん検診を受けて
“がん予防”
県健康づくり財団診療所
茂木 文孝さん
がんは、県民の2人に1人がかかる身近な病気です。「がんにならない」「がんを治す」といった情報は多くの人が関心を寄せるテーマですが、どんなに注意しても完全に予防することはできません。より早い段階でがんを見つけて治療することが大切です。前橋市堀之下町、県健康づくり財団診療所院長の茂木文孝さんは「がん検診の通知が届いたら、皆で誘い合って受けましょう」と呼び掛けます。
早期治療で死亡率低下
市町村や職場で実施しているがん検診。毎年、必ず受診している人がいる一方、「がんの家系ではないから」「忙しくて時間が無い」「検査が大変そう」「がんが見つかったら怖い」などの理由で受けていない人もいます。けれど、がんの自覚症状が出た後で医療機関を受診した人の多くは検診を受けなかったことを後悔しているのではないでしょうか。
厚生労働省が推奨しているがん検診は五つ。胃がん、肺がん、子宮頸がん、乳がんと大腸がんです。早期の発見、治療で死亡率の低下につがなることが科学的に証明されています。検診は自覚症状が無く、健康的に日常生活を送っている人を対象にしています。もし、がんが見つかっても早期である可能性が高いので、治療しやすい上、経済的な負担や治療に費やす時間も少なくて済みます。
40代から増加
大腸がん
5大がんの一つ、大腸がんは食生活の欧米化とともに日本人に増えました。最近は飲酒との関連も指摘されています。40歳代から増加し始めて高齢になるほど罹りやすく、男性の罹患率は女性の1.4倍、死亡率は1.2倍です。
がんは腸壁の最も内側にある粘膜から発生します。粘膜にできた良性のポリープががん化したり、ポリープを介さずに直接発生したりしますが、徐々に腸壁の奥へと広がります。がんが広がるにつれてリンパ節や血管に侵入するようになり、近くにある臓器、例えば胃や小腸、膀胱、腹膜などが侵され、肝臓などの離れた臓器へと転移します。
がんが大きくなると、便に血が混じったり下血したり、貧血になるなどの自覚症状が出ます。便の通り道が狭くなると、おなかが張ったり、まれに腸閉塞を起こすこともあります。
検診で行う便潜血反応検査は、肉眼では確認できないような粘膜の出血を探し出して早期がんを見つけます。便が通過する際にポリープやがんがこすれて傷つくと、血液が便に混じったり表面に付着します。ヒトのヘモグロビンだけに反応する検査薬を使って潜血反応が「陽性」と出るとがんが疑われます。
便の取り方にはコツが要ります。表面全体をまんべんなくなぞること。ヘモグロビンは高温で変性しやすいので、採取した後は冷暗所で保存します。特に注意が必要な夏場は、保冷剤などを使うとよいでしょう=イラスト。
禁煙、生活改善も大切
検査の判定結果は100%正しいとは限らず、出血しづらいがんであったり、出血があっても潜血反応が出ない場合があります。大腸がんは数年かけて大きくなるので、その前に見つけるためにも毎年受けて精度を上げることが大切です。一方、「陽性」でも、すぐにがんと結びつくわけではありません。痔など良性の疾患であるケースもあります。だからといって放置することは危険です。精密検査(大腸内視鏡検査)で詳しく調べることが大切です。
がんが腸壁に留まっている状態で治療すれば95%以上の確率で治ります。そのためには、40歳を過ぎたら毎年検診を受けること。他のがんも同様、対象年齢になったら定期的に受診してください。もちろん、禁煙への意識を高めたり、食事や運動など生活習慣を見直すことも重要です。