帯状疱疹は 早期治療が鍵

お医者様
伊勢崎市民病院 田村 敦志さん

虫刺されや汗かぶれなどで発疹ができることはよくありますが、中には一日も早く治療を開始したほうがよいものもあります。その一つが帯状疱疹[ほうしん]です。一生涯に3人に1人がかかるといわれ、特に高齢になると発症しやすい疾患です。伊勢崎市連取本町の伊勢崎市民病院医療副部長で皮膚科医の田村敦志さんは「帯状疱疹の痕が顔面などに残ったり、発疹が治った後も痛みが持続することがあります。症状を見逃さず、医療機関を受診してほしい」と呼び掛けます。

神経に沿って片側だけに

帯状疱疹は、過去に水ぼうそうになった人ならば誰でも発症する可能性があります。水ぼうそうが治った後もウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)は消えず体内の神経の中に潜んでいて、ウイルスに対する抵抗力が落ちると再び活性化します。ピリピリ、チクチクといった痛み(神経痛)が出ることが多く、神経に沿って水ぶくれや赤い発疹などの皮膚症状が帯状に広がります。発疹は化膿[かのう]することもあり、かさぶたができて治るまでおよそ3、4週間かかります。

発疹は全身どこにでも出ますが、比較的多いのは顔と胸。神経は体の中心から左右に分布しているため、片側だけに広がるのが特徴です。痛みには個人差があり、風が当たるだけで強い痛みを感じる人がいる一方、痛みの無い人もいます。

痛いところに発疹

子供や若者も発症しますが、多いのは高齢者です。加齢とともにウイルスに対する抵抗力が落ちることが原因で、85歳以上の2人に1人が罹患する、というデータもあります。大半は1度で済みますが、発症部位を変えて2、3度繰り返す人もいます。水ぼうそうのような強い感染力はないので、日常生活で感染することはほとんどありません。ただし、水ぶくれ(水疱[すいほう])の中にはウイルスが存在します。例えば、授乳中の母親の胸に帯状疱疹ができた場合、水疱の内容物が乳児の口の中に入るような接触をすれば、免疫のない子供は水ぼうそうになります。

痛みが続いたあと体の片側のみに帯状あるいは飛び石状に発疹ができたら、高い確率で帯状疱疹が疑われます。重症化して顔面神経麻痺[まひ]などの合併症が出たり、治ったところにやけどのような傷痕が残ったりするのを避けるには早期治療が大事です。最初に出る痛みだけでは診断が付きません。発疹が出てから3日以内に受診してほしいのですが、遅くても5日以内に皮膚科専門医に診てもらいましょう。治療は抗ウイルス剤を使って炎症を抑えます。基本は飲み薬を1週間処方します。入院して点滴をしたり、外用剤を使って治療するケースもあります。

重症化で残る痛みも

痛みは皮膚症状とともに軽快しますが、痛みだけが長く持続することもあります。ウイルスによる炎症で神経が壊れたまま元通りにならないと後遺症として帯状疱疹後神経痛と呼ばれる痛みが残ります。時間の経過とともに少しずつ軽減されますが、発疹は治っているので周囲に理解されず、QOL(生活の質)も大きく低下してしまうつらい痛みです。さまざまな治療法がありますが、決定的なものはありません。痛みを残さないよう、早期治療でしっかり治すことが何よりです。

あらかじめワクチンを接種して帯状疱疹を予防する方法もあります。発症を抑制する効果が期待できるワクチンは、50歳以上の成人が対象です。また、免疫力が大きく落ちている人など、従来のワクチンが使えなかったハイリスクの人にも投与できる新しいワクチンも近い将来、使えるようになります。

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