いつ手術する? 加齢による白内障

お医者様
羽生田眼科医院 羽生田直人さん

白内障はお年寄りの病気だと思いがちですが、50歳代になればおよそ2人に1人は発症しています。糖尿病やアトピー性皮膚炎を患っていたり、ステロイド薬を長く使用していると、若い人でも発症していることがあります。前橋市本町、羽生田眼科院長の羽生田直人さんは「視力の低下や見づらさはQOL(生活の質)を下げます。年齢を問わず、見づらさを感じたら手術の検討を」と助言します。

50歳代で2人に1人

白内障の原因として最も多いのは加齢によるものです。高齢になれば誰でも発症し、80歳代でほぼ100%といわれています。目の一部、レンズの役目をしている水晶体は正常ならば透明ですが、老化現象で白く濁ると光がうまく通過できず、見え方の質が低下します。主な症状は「目がかすむ」「ぼやける」「光がまぶしい」など。ただし、白内障の濁り方によって症状は人それぞれ違います。進行が軽くても、瞳にかかる中心部分の濁りが強いと視力低下を起こしやすいことがあります。

見づらさを感じたら手術

濁った水晶体を元に戻すことはできません。視力を回復させるには手術を、進行を遅らせるには点眼薬を選択します。水晶体の替わりに「眼内レンズ」を入れる白内障手術は、医療機器や眼内レンズの進歩によって、以前よりも安全で結果の良い手術になりました。

眼内レンズの耐用年数は長く、よほどのことがない限り、取り出したり入れ替えたりすることはありません。また、いろいろな種類のレンズが利用可能になりました。大きく分けて、ピントが合う距離が1点の「単焦点レンズ」と、遠近両用の眼鏡のように遠くにも近くにもピントが合う「多焦点レンズ」の二つ。乱視に対応するタイプのレンズもあります。多焦点レンズを用いた白内障手術は、保険の利かない自費診療となります。また、厚生労働省が先進医療として認めた手術の一つです。

自己チェックの習慣を

白内障が進んで眼鏡が合わなくなった人は、眼鏡を新調しても視力は良くなりません。「まだ見え方は困っていない」と思っていた人が、運転免許の更新前に慌てて白内障手術を受ける人もいます。普通自動車を運転する場合、矯正視力が0.7以上ないと更新できないからです。手術のタイミングは、日常生活に不自由を感じたり、見え方の質が落ちたとき。なので、視力が良くても症状が強いために手術を受ける人もいます。

糖尿病で血糖コントロールが悪かったりすると、合併症のリスクも高くなるので注意が必要です。基礎疾患や認知機能の低下などの理由で手術中に動いてしまう危険がある人は、全身麻酔が必要なこともあります。

目の病気は白内障だけではありません。加齢とともに緑内障や加齢黄斑変性など失明する危険を伴う疾患にかかりやすくなります。「気付いたら病気が悪化していた」とならないよう、日ごろから「片目ずつ、見え方に変化がないかどうか」を自己チェックする習慣を付けましょう。定期的な眼科健診も大切です。気になる症状があったら、自己判断せず医療機関で相談してください。

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