口腔粘膜疾患
口の病気
白板症をチェック
日高病院
天笠 光雄さん
口の中の疾患はむし歯や歯周病だけではありません。口腔粘膜の疾患の一つ白板症は「前がん病変」といわれ、放置しておくとがん化することもあります。東京医科歯科大名誉教授で高崎市中尾町、日高病院歯科口腔外科の天笠光雄さんは「『白板症=がん』ではありませんが、早期発見することで口腔がんの予防につながります。放置しないことが大切です」と呼び掛けます。
放置で約8%がん化
白板症は名前の通り、白い板や白斑のように見える口腔粘膜の疾患です。歯肉、舌、頬粘膜、口底(舌の下)など場所を選ばず発症し、放置すると約8%ががん化するため「前がん病変」と呼ばれます。
原因の一部は喫煙の習慣と慢性的刺激(合わない入れ歯や義歯、むし歯など)ですが、多くは分かっていません。自覚症状も無く、病変が赤みを帯びるとしみるだけです。早期発見するには、日ごろから口の中をよく観察することが大切です。
鏡の前で口を大きく開けてみましょう。表面が白っぽくて、綿棒でこすっても落ちない病変は白板症の可能性があります。特徴は①全体が白く(濃淡はさまざま)、一部赤みがある場合もある②表面は平らでツルツルしているが、凸凹やいぼ状、ざらざらしている場合もある―の2点。舌を出して左右に動かしたり、舌を上げて口底をチェックするなど口の中全体を確認します。特に「一部が赤みを帯びている」「表面が凸凹している」「面積が広い」「多発している」といった病変は注意が必要です。
口腔がんの2~4割
白板症が見つかったからといって、すぐに切除することはありません。がん化するまでの期間は最短で6カ月、最長20数年と個人差があります。一方、自然に治る白板症も1~2%ですが存在します。ただし、口腔がん全体に占める割合は20~40%で最も多いというデータがあります。白板症を早期で見つけ、がん化しても早期治療できるよう定期検診することが大切です。
経過観察していく途中でがん化が疑われたら、細胞を詳しく調べた上で診断を付けます。早期がんならば手術で切除すれば95%の高い確率で治ります。一方、がんの発見が遅れるとリンパ節から骨や肺、肝臓などに遠隔転移しやすく、放射線や抗がん薬などを使っても治療効果はあまり期待できません。
口の中
見る習慣を
口の中の異変に気付き、症状が2週間経っても改善しなかったら、まずはかかりつけの歯科医院で相談しましょう。がん化が疑われる白板症や、それ以外の治療が必要な疾患であれば、病院の口腔外科(または歯科口腔外科)を紹介され、そこで診断が付きます。
体の内部から発生するがんと異なり、白板症などの口腔粘膜疾患は自分で見つけることができます。日ごろから口の中を観察する習慣を付け、定期的な歯科健診をして早期発見に努めてください。