日常取り戻す支援
作業療法士
丸橋 舞さん
食事、排せつ、入浴など日常生活全般の機能改善に関わる作業療法士は、医療や介護、福祉など多くの現場で活躍している。群馬リハビリテーション病院(中之条町上沢渡)で働く丸橋舞さん(31)も、事故や脳の病気で入院する患者の機能回復に取り組んでいる。障害の状態や生活スタイルは一人一人異なり、趣味や仕事など生きがいもさまざまだ。治療に当たっては医師や看護師、家族らと連携して、退院後の人生を見据えたリハビリ指導を心掛けている。
左手ではしを使う訓練を指導する丸橋さん。
リハビリを終えた後の「ありがとう」が日々のやりがいだ
あきらめず
できる工夫を
高校時代に祖父が病気で右半身まひの状態になり、現在の勤務先に入院した。筆まめだった祖父は、字が書けなくなってすっかり気落ちしていた。だが、リハビリによって左手で字を書き、はしを使えるまでに回復。生きがいを取り戻して喜ぶ祖父の笑顔を見て、リハビリの仕事をしようと決意した。
就職してすぐの頃は、早く回復させてあげたいと気持ちばかりが空回りしていた。指導が厳しすぎると担当替えを言い渡されたことも。その経験から、相手の人生にしっかり寄り添ったケアを目指している。
例えばトイレの動作一つとっても、何ができて何ができないのかを見極めることが重要だ。立ち上がるのが難しければ手すりや介助を添える。ドアノブを回す動作が苦手なら、開け方を工夫する。
できないとあきらめずに、できる方法を探すのが私の仕事。病院では指先を使う治療道具のほか、上腕の運動機能の回復を支援するロボットもある。障害の状態やその人の好みに合わせ、最適なリハビリ方法を提案したい。
手を動かす
小さなやりがい
手を動かすと、脳が活性化して血流が良くなる。作業療法にも取り入れているが、あやとりや折り紙、塗り絵など手を動かす趣味を持ってほしい。園芸もお薦めだ。農作業が苦手な人もプランターなら気軽に始められる。水をあげたり、収穫したり。患者の皆さんを見ていると、日常生活で小さなやりがいを積み重ねることが健康の秘けつだと気付かされる。