痛風発作は
体の悲鳴!
群馬大病院腎臓・リウマチ内科
金子 和光さん
激しい痛みで知られる痛風。痛みが治まった後も、「二度と味わいたくない」と医療機関に通ったり食生活の改善をしていたはずが、いつの間にか元の生活に戻ってしまった…という人が後を絶ちません。群馬大医学部附属病院腎臓・リウマチ内科講師の金子和光さんは「痛風を繰り返すと腎臓が悪くなり、透析予備軍に近づく危険があります。手遅れにならないようしっかり治療してほしい」と警鐘を鳴らします。
痛風発作は急性関節炎
足の親ゆびの付け根などに起こる痛風の激しい痛みは、末梢の関節に沈着した尿酸の結晶化による急性関節炎です。よく「プリン体の多い食品を摂取すると痛風になりやすい」といわれますが、尿酸は細胞が新陳代謝する際に分解してできるプリン体の老廃物、決して悪者ではありません。活性酸素を中和させる働きがあり、血管を痛めないよう一定量が血中に溶け込んでいます。
通常、必要以上の尿酸は腎臓でろ過されて尿と一緒に排出されますが、何らかの理由で尿酸値が高い状態が続く人がいます。尿酸値が6.4mg/dlを超えると血液中に溶けきれずに沈着し、7.0mg/dlを超えると高尿酸血症と診断されて痛風の発作が起こりやすくなります。
放置すると腎機能低下
痛風を発症する人の大半は「30~50歳代の太っている男性」で、高血圧や糖尿病、脂質代謝異常などの生活習慣病を持っている、という共通点があります。
肥満は高尿酸血症になりやすく、また高尿酸血症の患者さんでは高血圧が発症する危険性が高いことも指摘されています。さらに、高血圧が続くと腎機能が低下して尿酸が排泄されにくくなります。そして、このような悪循環が続くと痛風発作が増えて腎臓のダメージも進行します。
繰り返す痛風発作や高尿酸血症を放置している状態は「透析の予備軍」といえます。また、腎臓が悪くなると心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まるだけでなく、痛風治療に使う薬も含めて多くの薬の選択肢が少なくなります。定期的に医療機関を受診して、尿酸値と一緒に腎機能を調べてもらってください。
まずは体重3%落とす
痛風の痛みは薬で和らぎます。発作が治まったら尿酸値を下げる治療を始めましょう。7.0mg/dlを切っても安心せず、関節に沈着していた尿酸が血中に溶け出す6.4mg/dl以下に目標値を設定します。ただし、薬だけでは十分に下がりきらない場合も少なくありません。同時に高血圧など合併症の治療をしながら体重を減らすことが重要です。
ビールを日本酒に代えるなどプリン体の多い食品を減らしても、いままでと同じカロリーの食事を続けていては効果が期待できません。まずは体重を3%落とすことを目指して減量しましょう。最近は、「同じ摂取カロリーでも、夕食から就寝までの時間を空けると太りにくい」ともいわれています。食事を取る時間を工夫したり、運動しながら減量することを勧めます。
痛風の発作は体が発した合図です。悲鳴を上げていることを理解して、これをきっかけに生活習慣を見直してください。