治療で白血病
治る時代に
群馬医療福祉大
村上 博和さん
競泳女子のエース、池江璃花子選手が今年2月に白血病を公表。衝撃的なニュースが全国を駆け巡った。白血病は、骨髄の中にある赤血球や白血球、血小板をつくる血液細胞ががん化し、正常な血液がつくれなくなる「血液のがん」。不治の病と言われてきたが、適切な治療で治る時代になった。群馬医療福祉大教授の村上博和さんは「早期発見、早期治療が肝心」と訴える。
四つの白血病タイプ
白血病の種類は「骨髄性」と「リンパ性」があり、進行の速さで「急性」と「慢性」に分かれます。急性は急激な発症、慢性は徐々に進行していきます。報道を聞く限り、池江選手は、おそらく急性の白血病ではないかと考えられます。成人の多くは急性骨髄性、中学生以下の子どもは、急性リンパ性が多い。60歳を超えると患者数は急激に増加します。白血病全種類の罹患率は10万人中、9.5人(2014年)。
慢性骨髄性は、白血病細胞を効率よく攻撃する「分子標的治療薬」が進歩し、副作用も少なく飲み薬で治るようになりました。他のがんとの合併や感染症を引き起こしやすい慢性リンパ性は白人に多く、日本人には少ない白血病ですが、増加傾向です。慢性は初期症状も軽く、進行が遅くて気付きにくいので、早期発見には血液検査のある健康診断が重要です。
貧血や出血症状
白血病細胞が増殖すると、骨髄の中にある赤血球、白血球、血小板をつくる造血幹細胞が正常な血液をつくれなくなります。骨髄性、リンパ性ともに、赤血球の減少で貧血、白血球が少なくなることで感染症にかかりやすくなり、血小板がつくりにくくなることで出血しやすくなります。そのため、動悸や息切れ、長引く発熱や疲労感、あざや点状出血、紫斑といった症状が現れます。
白血病細胞を調べると、遺伝子に傷が付き異常があることが確認できます。後天的に何らかの原因で傷付いた細胞が増殖してがん化していきます。特定な原因ではなく、さまざまな要因で細胞にダメージが与えられ、遺伝子異常が修復できない状態になったと考えられます。まだ原因が分かっていないので、予防もできないのが現状です。
骨髄バンク登録
急性の場合、白血病細胞を減らすために、抗がん剤治療の「寛解導入療法」を行います。骨髄中から白血病細胞を全体の5%以下に減らし、正常に近い状態にします。その後、「地固め療法」で、種類を変えた抗がん剤治療を再び行います。正常な細胞にも影響を及ぼすので、毛が抜けたり、下痢やおう吐に襲われたりします。65歳未満の急性骨髄性の完全寛解率は8割を超え、感染症など合併せず順調にいけば、半年くらいで社会復帰できます。5年過ぎても再発しなければ、治癒といえます。
急性白血病で、抗がん剤治療で治りにくい場合は、造血幹細胞移植が必要です。以前は骨髄移植と呼んでいました。日本骨髄バンクに登録しているドナーは、10年前の30万人台から約50万4千人(19年2月末現在)と大幅増。移植条件の白血球の型(HLA)が適合する確率は、兄弟姉妹は4分の1、非血縁者は数百から数万分の1です。技術進歩で、完全に型が合わなくても移植が可能になりましたが、ドナーの数はまだまだ足りません。本県のドナー登録数は千人当たり、全国平均8.87人に対し、6.50人。登録者が多いほど白血病患者が移植を受けられる可能性は高まりますので、ドナー登録について一度、考えてみてください。