疲労回復の
香辛野菜
驚くべき
ニンニクパワー
独特の香りが食欲をそそるニンニク。疲労回復に効果的な香辛野菜として注目され、料理の下味などに広く利用されている。香りのもとは「アリシン」という成分。殺菌作用が強く加熱処理がおすすめ。収穫は5~6月だが、通年で販売されている。食欲不振やけん怠感のある時は、ニンニクを使った料理を一品加えてみてほしい。
ニンニクの旬は初夏。タマネギと同じように、根元の球根(鱗茎)を主に食用としている。「いまは春の日差しをいっぱい浴びて、養分を球根にため込んでいるところです」と高田さん。噴霧器でバイオ肥料を散布する作業にも、一段と力が入る。
秋に芽を出したニンニクの葉は、冬の厳しい寒さに耐えて30cmほどに育ち、広々とした畑一面を緑色に染めている。「収穫までには膝くらいまで成長します」と、高田さんは期待を込める。
栽培品種は、生産量トップの青森県で作られている「ホワイト六片」。昨年は3.5haの畑に種球の植え付けを行った。ピークだった一昨年は4.5haに植え付け、約20tを収穫した。しかし、天候不順の影響で球根が小さかったり、不ぞろいだったりして出来はいまひとつ。「天候に左右されやすいのが露地栽培の悩みです」と打ち明ける。
施肥、土づくりが大切
高田さんがニンニク栽培を始めたのは10年ほど前。知人から依頼されたキムチ販売をきっかけに、自家栽培のニンニクを使って、自分でもキムチを作ろうと思い立ったのがきっかけだった。
もともと農家の生まれで、家には畑もあった。ちょうど脱サラしてベンチャー企業を立ち上げたが、うまくいかなかったときでもあり、「やる気に燃えていました」と振り返る。
最初の年は、せっかく収穫したニンニクを知識不足から乾燥に失敗し、ほとんど使い物にならなかった。そこで、青森県の生産農家を訪ね、栽培方法や肥料、保管の仕方などについて、直接指導を受けた。
ニンニクは栽培期間が長いので、堆肥などの有機物をたっぷり施すなど、土作りがとても大切。さらに追肥、春先からは10日に1度の液体肥料の散布と、高田さんは施肥への注意を怠らない。収穫を迎えるまでは草取りや花茎の摘み取りなど大変な作業が続く。主に長男、諭さん(39)と2人でこなしている。
「黒にんにく」も製造
「ホワイト六片」は寒地系の代表品種で、白くて大きな鱗片が6片ほど付く。香りがよくさまざまな用途に向いている。
高田さんは5~6月の収穫後、根と茎を切ってハウス内で3週間余り乾燥させ、大きな冷蔵庫に保管。年間を通じてスーパーや農産物直売所などに出荷している。付加価値を付けるため、「黒にんにく」の加工も行っている。約1カ月間、低温で蒸した後、さらに1カ月かけてゆっくり熟成・発酵させることで、ニンニクは白から黒色に変わり、本来の甘さが加わる。「糖度は20度以上あります。ぜひ食べてみてください」と高田さん。「生産仲間を増やし、ニンニクを藤岡の特産品にしたい」と意欲的だ。
元気な暮らしに役立つ
栄養のお話
高崎健康福祉大学
大学院食品栄養学専攻教授
松岡 寛樹
由来
ニンニクは、アリウム属に属するユリ科の植物に分類されます。ネギ、タマネギ、ニラ、ラッキョウなどもその仲間です。原産地は中央アジアといわれ、疲労回復にも使われ、人類が文明を築いた時代からあったとされています。当時は、殺菌、消毒などの貴重な薬として扱われていたようですが、大量栽培技術の発展とともに、食品、嗜好品の用途も広がりました。ニンニクは、その特有の臭いが故に、仏教では禁忌食品として扱われ、宗教的な弾圧を受けながらも、現在に受け継がれてきました。香辛野菜としての万能性と疲労回復などの人類の健康長寿に役立ってきたからと考えられています。
特徴的な成分
ニンニクは、硫黄系の揮発性有機化合物を多く含むのが特徴であり、総硫黄含量は0.3%になります。臭いの前駆物質はアミノ酸の一種である「アリイン」になります。生の状態で切ったり、すりつぶしたりするなどの方法により組織が壊れると、アリイナーゼと呼ばれる酵素が働き、アリインを「アリシン」に変化させます。アリシンはニンニクの臭い成分として一般にも知られている物質ですが、実は不安定な物質です。それから生じるジスルフィド類が臭い成分の本体になります。
ニンニクは殺菌効果以外に、抗酸化効果、ガン予防効果及び体力増強、疲労回復効果など、健康効果というよりは薬理効果としての研究が盛んです。
栄養
表1にニンニクの栄養成分を示しました。香辛料目的で使われるため、栄養素の視点から論じることは少ないですが、特筆すべき点としては魚介類や肉類に含まれる「セレン」と呼ばれる微量必須ミネラルを含んでいることです。その他、疲労回復系のアミノ酸であるアルギニンなども多く含んでいます。
食べ方
アリシンの殺菌効果は高く、生でそのまま食べることはおすすめできません。加熱調理により、酵素を失活させアリシン生成を抑えるか、できたアリシンをジスルフィド類に変化させてから食べることをおすすめします。