生きがいある日常
後押し
作業療法士
川田 佑奈さん
病気やけがで歩行や起き上がりなどの基本動作が難しくなることがある。理学療法によって回復できた機能を、一歩進めて日常生活に必要な動作につなげていくのが作業療法士。患者一人一人の病状や生活習慣、仕事や生きがいなどはさまざまだ。公立藤岡総合病院(藤岡市中栗須)で働く川田佑奈さん(26)は、院内をはじめ、家族や復職に関係する多くの人と連携。退院後もその人らしく暮らせる支援ができるように努めている。
仕事内容に〝感動〟
保健師の母を見て育ち、将来は医療職に就きたいと思っていた。高校時代、自分に合う職種をインターネットで調べていたときに「作業療法士」を知り、興味を持った。大学のオープンキャンパスに参加して治療やケアだけでなく「患者さんのやりがいや生きがいをサポートする専門職が作業療法士だと知り、何て良い仕事なんだろうと感動した」。茨城県の医療大学を卒業後、資格試験に合格。現在の病院に就職して5年目に入った。
粘り強くアドバイス
けがや病状が安定した回復期病棟で在宅復帰や復職を目標に、時間を掛けてしっかりとリハビリに取り組む時期の患者を支援している。トイレや着替え、食事、入浴などの日常生活の動作から始めて外出時のお金の計算やバスの乗降。「家族の好きなカレーをまた作りたい」という要望に応えてキッチンで一緒に調理もする。
和室で暮らすことの多い高齢者には、布団の上げ下ろしや夜間、安全に布団から立ち上がれるか─などを詳細に確かめ、帰宅後の実状に即した練習を繰り返し行う。「意外とできるねー」「ここが大変」と話しながら、動かしづらい手や足を少しでも楽に使えるよう粘り強く助言し、練習する。補助用具の紹介や手すりの設置など、患者を取り巻く生活空間の改善の提案もしている。
役立つ経験積みたい
医療チームの一員として、毎日情報を共有し、定期的に家族と面談して今後の方針を決めている。リハビリの様子を見て理解を深めてもらうため、職場の人を招き、ドライビングシミュレーターを使った運転練習も教習所と連携して行うなど、仕事の幅は広い。「一人前には程遠く、毎日が勉強」と気を引き締める。
「できないと諦めていた患者さんが、やりたいことができたときに家族と一緒に喜ぶ姿を見ると、やりがいを感じる」。できたときも、できないときも共に喜び、悔しがる。患者の気持ちに寄り添い、その人らしい生活が送れるように心掛けている。心身に不自由があっても、楽しみを見つけて外に出掛けることを勧めたい。目的をもって生きることが、若さや元気の源だと思うからだ。
昨年末、結婚した。今後は「一人の人間としても経験を積み、院内で学び合える環境の中で成長して、患者さんの希望に沿う生活が実現できるように役立てたい」。