麻疹、風疹 ワクチン接種を

お医者様
群馬大医学部附属病院 感染制御部 徳江 豊さん

今年に入り、流行している麻疹(はしか)と風疹。ともにウイルスが原因で、感染すると合併症などを引き起こすだけでなく、妊娠初期で風疹にかかると、胎児が心臓病や白内障などの先天的な障害を持つ可能性が出てくる。群馬大医学部附属病院感染制御部長の徳江豊さんは「麻疹も風疹もワクチンで防げる病気。必ず予防接種してほしい」と呼び掛ける。

麻疹の患者 昨年の倍

一般的に「はしか」と呼ばれる麻疹は、麻疹ウイルスが原因で発症し、空気感染、飛沫感染、接触感染と非常に感染力が高い病気です。症状としては、咳や鼻水など風邪に似た症状が現れ、3、4日間は発熱が続き、いったん熱が下がった後に、39度前後の高熱とともに特有の発疹が出るのが特徴です。

肺炎や脳炎、中耳炎などの合併症を引き起こす可能性もあり、1000人に1人は亡くなると言われています。麻疹は、2015年に国内で排除状態にあることが認定されましたが、海外からの流入で感染が広まっています。今年5月に患者数が500人を超え、すでに昨年1年間の患者数の2倍近くに上っています。

風疹で胎児先天障害も

風疹は、風疹ウイルスが原因で、飛沫感染します。別名「三日ばしか」と呼ばれるように、発熱、発疹など麻疹よりも軽い症状ですが、妊娠20週ごろまでの妊婦が感染すると、胎児は生まれつき心臓病や白内障、難聴などの障害のある「先天性風疹症候群」になる可能性があり、特に注意が必要です。

12-13年に流行した時は、45人の胎児が同症候群と診断され、中には亡くなったお子さんもいます。風疹も麻疹同様に、国内型は来年の東京オリンピックまでに排除を目指していますが、今年は5月までに1500人以上の患者が出ており、流行した12-13年に次ぐペースで推移しています。

ワクチンで防げる病気

麻疹も風疹もワクチンで防げる病気です。予防接種を2回必ず受けてください。いずれも一度発症すれば二度とかからないといわれていますが、思い込みのこともあります。

麻疹は06年から、1歳と就学前の2回定期接種を受けることになりましたが、それ以前の方は、ワクチンを1回もしくは接種していないケースもあります。

風疹のワクチン接種は、現在、1歳時と就学前で2回定期接種を受けますが、1990年4月1日生まれ以前は、1回の接種、そして、62年4月2日から79年4月1日生まれの男性は、ワクチン接種の機会がありませんでした。当時は、将来妊娠する可能性のある女性のみの接種で十分と考えられていたためです。

風疹の抗体検査を

麻疹は国内排除の流れになりましたが、風疹は胎児への影響もあるため、群馬県は、妊娠を希望する女性や配偶者などの同居者を対象とした抗体検査を無料で行っています。また、定期接種の機会がなかった男性に対しては、各市町村で、抗体検査とワクチン接種の費用を原則無料で行っています。麻疹と風疹混合の「MRワクチン」もあります。

2回接種になったのはつい最近のことです。多くの人が麻疹、風疹に対しての抗体を持たないか、抗体価が低い可能性があります。まずは抗体検査を受けてください。

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