救命の現場へ
空を駆ける
フライトナース
田村 千佳子さん
事故や災害の現場に駆けつけ、患者の搬送や救命医療を行う「ドクターヘリ」。本県では前橋赤十字病院を基地病院として配備されている。同院の田村千佳子さん(36)は医師、機長、整備士とともにヘリに搭乗する「フライトナース」だ。医療器材を備え医師と看護師を現場に運ぶドクターヘリは、「究極の往診システム」ともいわれる。いち早く治療にあたるため、フライトナースは豊富な看護経験や救急救命、無線など多くのスキルを手に現場に臨む。
究極の「チーム医療」
ドクターヘリの目的は、救急患者に対する早期の治療開始と、搬送時間短縮による救命率向上、後遺症の軽減だ。現場では一分一秒を争うため、指示を待っていたのでは間に合わない。フライトナースは救急隊からの情報をもとに、患者に接する前、または実際に接触した瞬間から行わなければならない処置を予測、滞りなく実施できるよう「医師と同じ思考」で動く。そのため、看護師資格だけでなく救急看護師としての豊富な経験や、救急救命の資格、実際に救急車に乗っての実習などが求められている。
救命の最前線で感じるのは、「ドクターヘリだけが華ではない。本当に多くの人のおかげで活動できている」ということ。同乗する医師はもちろん、機長、整備士、いち早く現場に駆けつける救急隊、砂煙防止のため着陸場所に水をまく消防隊、警察官、患者を受け入れる病院。医療機関だけにとどまらない「チーム医療」の力を実感し、支えてくれる仲間に感謝する。
最良の看護を目指して
手術室を担当していた時、ギリギリで命をつなぎとめる現場の仕事に魅力を感じた。災害派遣医療チーム(DMAT)にも興味があったことから、周囲の勧めもありフライトナースを志した。瀕死の患者を救うため、ドクターヘリに関わるさまざまな職種が一丸となってベストを尽くし、「救命」を達成することにやりがいを感じている。「そのチームの一員である事をうれしく思います」
同院のフライトナースは現在7人。毎月の会議を通じ、情報共有を図っている。「患者にとって最良の対応はなにか、を常に自分自身に問いかけ、より良い看護ができるよう、仲間と互いに高め合っていきたい」と気を引き締める。