症状合わせた
食事提案
管理栄養士
並木 純子さん
食と栄養は生きる上で欠かせない要素であり、健康な体をつくる土台となる。管理栄養士は高度な専門知識や技術を持つ「栄養の専門家」として、総合病院や福祉施設、食品開発・研究、スポーツなど、さまざまな分野で活躍している。桐生厚生総合病院 (桐生市織姫町) で働く並木純子さん(29)は、患者一人一人の病状に応じた栄養管理や食事指導を行い、病状の回復や生活習慣病の予防をサポートしている。
原点は「母の手料理」
人をサポートする医療従事者に憧れ、健康の源である食事に関わる管理栄養士を志した。体をつくる食事の大切さは、母の手料理から教わった。「ほとんど病院にも行かず、健康に過ごしてこられた。母が栄養バランスや添加物に気遣った料理を作ってくれたおかげと感謝している」
大学卒業後に管理栄養士となり、学校給食の現場に就職。経験を積む中で、もっと専門的な治療や病気の予防に関わりたいと思い、現在の病院の仕事を選んだ。
意識変えるきっかけ
病院のある桐生市は高齢化率が高く、「食べる」と「飲む」の力が弱くなる「摂食・嚥下障害」を抱えて来院する患者も多い。管理栄養士は本人や家族の希望を聞き、嚥下機能や病気の状態に合った献立を提案する。糖尿病や腎臓病など病状によってカロリーや塩分、糖質を制限する必要があり、院内では300種類以上の献立が用意されている。調理スタッフと話し合い、患者の体調に合わせた調理法を考えるのも仕事の一つだ。
栄養指導で検査数値や病状が改善すると、患者自身の意識も変わってくる。「『これを食べてください』と押しつけるのではなく、食生活を考えるきっかけづくりを目指したい」と意気込む。
続けることで効果
多職種で栄養管理を行うNST(栄養サポートチーム)に所属し、医師や看護師、薬剤師などと連携して摂食障害や低栄養患者の治療に当たっている。看護師から食事方法の相談を受けたり、医師に適切な経腸栄養剤を提案したり。さまざまな病状の患者に対応するには、栄養だけでなく、病気の原因や容態に対する理解が欠かせない。チーム医療で存在感を発揮できるよう、専門知識を増やし、コミュニケーションスキルを高めるのが目標だ。
薬と違って食事療法は即効性がないが、続けることで体が変わってくる。大切なのは三大栄養素(糖質・脂質・タンパク質)に加え、ビタミン・ミネラル・食物繊維の六大栄養素をバランスよく取り、一日約350グラムの野菜摂取を心掛けること。「長期にわたる不摂生は高血圧や肥満につながり、生活習慣病の原因になる。好きな物だけでなく、栄養バランスや新鮮な食材など食事の質にもこだわってほしい」