今が旬! 甘酸っぱい果実
ワンダーフルーツ

夏の果物はたくさんあるが、中でも甘酸っぱい味わいでフルーツ好きを魅了するのがプラムだ。食べた時に感じる酸味のリンゴ酸は疲労回復や日焼け防止に効果があると言われている。また、ビタミンやミネラルなどをバランスよく含んでおり、優良フルーツにも挙げられる。これから収穫の最盛期を迎える新鮮なプラムをたくさん食べて、暑い夏を元気に乗り切ってほしい。

国道沿いの「道の駅上野」から車で10分。北側にそびえる小高い山の急斜面を登ったところに、黒沢さんのプラム畑が広がっている。赤く色付き始めた実が、青々と繁る葉の間から顔をのぞかせる。

「いま収穫しているのは『大石早生』です。この後、メーンの『ソルダム』、そして『ハニーローザ』や『太陽』などと続きます」と黒沢さん。収穫時期の異なる10種類ほどを栽培している。プラム畑は4カ所に点在しており、栽培面積は延べ60a、果樹は300本ほどに上る。樹齢は40年近い古木が多い。「このあたりでプラム栽培が始まったのは40年ほど前なので、そのころ植えたものだと思います」

収穫を迎えた「大石早生」。枝がたわむばかりに実っている

収穫作業ははしごの上で、腕を伸ばして熟した実を一つ一つ丁寧にもぎ取っていく。「傷が付かないよう神経を使います」と、黒沢さんは日焼けした顔に白い歯を見せた。


家族4人で作業分担

農家の長男に生まれた黒沢さんは、高校を卒業後、食肉関係の会社に2年間勤務し、社会性を身につけた。さらに、オーストラリアの農家にファームステイし、働きながら有機農法を学んだ。農業後継者として家に入ったのは23歳のときだった。

「私が子どものころは、養蚕とコンニャク栽培が中心でした」と黒沢さん。「今はプラムのほかに、シイタケやマイタケなどキノコの施設栽培、キクの園芸栽培で家計を支えています」と、かみ締めるように話す。

農作業は主に、両親と妻の奈々美さん(51)を加えた家族4人で、手分けをして行っている。プラムの場合、収穫は黒沢さん、出荷作業は母親と奈々美さんが役割分担している。

「他の果樹と同様、病害虫の防除には気が抜けません」と黒沢さん。悩みのたねは、頻繁に出没するシカ、サルなどの動物や鳥などによる鳥獣被害だという。

規格外はジャムに

プラムは大きく「スモモ(ニホンスモモ)」と「プルーン(セイヨウスモモ)」に分類される。わが国で古くから栽培されているスモモの代表品種が、収穫時期の最も早い「大石早生」で、酸味が強く濃厚な味わいが特徴。これに対し「ソルダム」は、果肉が多くて甘みと酸味のバランスが良いので人気が高い。「ソルダムは甘みが強く、飽きずに食べられるのは大石早生です」と黒沢さんは評する。

収穫したプラムは、大きさによって5つに選別し、主にJAや村内の直売所に出荷するほか、注文のあった顧客に直送している。また、規格外をジャム作りに利用し、瓶に詰めて販売している。

JA上野村では、市場出荷されなかったプラムの一部を買い取り「プラムカレー」や「プラムジュース」を開発し道の駅などで販売しており、「ぜひ賞味して欲しい」と話している。


元気な暮らしに 役立つ 栄養のお話
東洋大学食環境科学部
健康栄養学科教授
高橋 東生

由来

プラムはバラ科サクラ属落葉小高木の実で、世界のすもも類を大きく分類すると欧州系(ヨーロッパスモモ)、東洋系、アメリカ系(アメリカスモモ)の3つに分けられます。わが国在来のプラムは東洋系に属し、原産国は中国で、はたんきょう(巴旦杏)またはいくり(郁李)と呼ばれるニホンスモモ(日本李)を基本種とする品種群を指します。しかしながら現在は欧亜系、米国系あるいはこれらの雑種などが導入、育成されていて、品種は複雑になっています。その歴史は古く、欧州では2000年前、北米大陸では400年前から栽培されているとされています。わが国には弥生時代に渡来したと言われており、万葉集や日本書紀にも「李」として登場しています。形態的には核果の一種で、果実には種子を内包する核があります。

プルーン

以前はヨーロッパスモモのうち乾燥果実として利用されてきた品種の総称だったのですが、最近では、ヨーロッパスモモをそのままプルーンとも呼んでいます。雨の少ないカリフォルニアなどで多く栽培されています。わが国にも明治初期に導入されましたが、育成期に雨が多いため裂果や病害が多く、一部の県でのみ栽培されています。

健康食品としてのプルーンは、乾燥したプルーンのエキスをペースト状やゼリー状に食べやすく加工したものや、粒状タイプのものもあります。

栄養成分

特徴的な成分として、プラムなどのフルーツ(特に皮)に含まれる水溶性の食物繊維であるペクチンは、急激な血糖値の上昇やコレステロールを下げる効果があると言われています。プルーンには免疫力を高める働きのあるβ-カロテンが多く含まれています。また、アメリカで行った動物実験では、貧血を治すプルーンの能力はレバーに次いで高く、ほうれん草やキャベツよりも優れているとの報告もあります。成分の比較では生と乾燥した加工品では水分量が異なるため、注意が必要です。他に、ナトリウムを排泄する役割のあるカリウム、血液をつくるのを助けてくれる葉酸など、バランスよくビタミンやミネラルがが含まれています。この高い栄養価から、欧米では“ミラクルフルーツ”や“ワンダーフルーツ”と呼ばれています。

発行
上毛新聞社営業局「元気+らいふ」編集室
FAX.
027-254-9904